2015年12月3日、小惑星探査機の「はやぶさ2」がスイングバイのために地球に接近し、そして無事に小惑星「リュウグウ」に向かう軌道に乗って飛び立ちました。ところで、はやぶさ2の報道でよく聞く、スイングバイをご存知ですか?
今回は惑星探査に重要な「スイングバイ」をおさらいしてみましょう。
「加速スイングバイ」と「減速スイングバイ」
まず、宇宙空間に漂う物体の方向やスピードを変えるにはエネルギーが必要です。そして探査機は遠くの惑星までたどり着くほどの燃料を搭載していないことがあります。では、どうやって十分なエネルギーを得ればいいのか…そう、「地球などの惑星の万有引力を利用しよう!」というのが、スイングバイなのです。
スイングバイでは探査機の方向を変えるだけでなく、加速させたり減速させることもできます。ここではその加減速の仕組を解説します。
まず加速スイングバイの場合、惑星の進行方向と逆の位置を通過することで探査機を加速できます。イメージ的には、重ーい惑星の側を通る時にその動きにつられて加速してしまった、といった感じでしょうか。今回はやぶさ2が利用したのもこの加速スイングバイで、地球の約3,100km上空を通過することにより、その速度が約30.3km/sから約31.9km/sに加速されました。
また逆に、スイングバイでは速度を減少させることもできます。こちらは加速スイングバイとは逆で、惑星の進行方向側を探査機が通過します。
ボイジャー 1号2号のスイングバイ利用例
はやぶさ2の以前にも、スイングバイの技法は利用されてきました。たとえば、ボイジャー1号と2号。1977年に打ち上げられた両機はまず木星に向けて打ち上げられ、その後木星でスイングバイを行ない太陽系外に旅立ちました。また、ボイジャー2号は土星でもスイングバイを行ないました。
その他にもハレー彗星の観測探査機や木星探査機ガリレオ、そして人工衛星ジオテイルの軌道修正など、幅広くスイングバイは利用されてきました。スイングバイは燃料搭載量の限られた探査機や人工衛星にとって、非常に重要な加減速や方向転換のメソッドとなっているのです。
今後、はやぶさ2は何をするの?
スイングバイによって十分な速度を得たはやぶさ2は、2018年に小惑星「リュウグウ」に到達します。リュウグウには水や有機物が存在する可能性が指摘されており、はやぶさ2は岩石を削減するなどして生命の起源についての証拠を探します。
そしてミッションを終えた後、はやぶさ2は2020年末に地球に帰還する予定です。前世代の探査機「はやぶさ」が小惑星イトカワからサンプルを回収して帰還した2010年には、日本だけでなく世界中でその偉業が讃えられました。今回のはやぶさ2でも、ミッションの成功が大いに期待されますね!
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Image Credit: NASA, JAXA, Space.com
■惑星の重力を利用して軌道を変更する「スイングバイ」
http://spaceinfo.jaxa.jp/ja/swingby_navigation.html
■はやぶさ2 進路変更の「スイングバイ」
NHK NEWS Web
■スイングバイ
Wikipedia