木星へ1994年に衝突したシューメーカー・レヴィ第9彗星は、木星の大気に水を供給していたかもしれない。欧州宇宙機関(ESA)のハーシェル宇宙望遠鏡がその証拠を見つけた。

1997年、赤外線観測によって木星や土星といったガス惑星の大気中に相次いで水が発見された。低層の大気であれば惑星本体に由来する水蒸気があってもおかしくないが、本体から離れた大気上層でも水が検出されたことは研究者にとって大きな謎だった。

ハーシェル宇宙望遠鏡は水分子が発する遠赤外線をとらえる装置を備えている。2011年にはこの装置のデータから、土星大気の水は衛星の1つで間欠泉のように氷と水蒸気を噴出するエンケラドスがもたらしていることがわかった。また、土星最大の衛星で大気を持つタイタンにもエンケラドスから水が供給されていることが判明している。

一方、木星の周囲における水の分布は南半球に偏っていた。これは衛星や環に由来する水とは考えにくい。衛星はほぼ木星の赤道に沿って回っているからだ。水の偏り方を説明できる現象はただ一つ、1994年に木星の南半球へ衝突したシューメーカー・レヴィ第9彗星だという。

シューメーカ・レヴィ第9彗星は木星の引力にとらわれ、いくつもの核に分裂しながら衝突して黒斑を形成したことで話題になった。あれからもう20年近くも立つが、いまなおその痕跡は残されているようだ。

 

■Herschel links Jupiter’s water to comet impact
http://www.esa.int/Our_Activities/Space_Science/Herschel/Herschel_links_Jupiter_s_water_to_comet_impact