ドイツの天文学者ケプラーが1604年に観測したことで知られる超新星(通称ケプラーの超新星)を、宇宙航空研究開発機構(JAXA)のX線天文衛星「すざく」が観測した。日米の研究者のグループが、X線の観測データから爆発前の天体の成分を計算している。
ケプラーの超新星は「Ia型」に分類される。Ia型超新星となる天体は、寿命が尽きた恒星の燃えかすである白色矮星だ。白色矮星に外から質量が供給される(たとえば至近距離にある伴星からガスが流れ込む)と、白色矮星の質量が一定量(太陽の約1.4倍)に達した段階で暴走的な核融合が起きて超新星爆発を起こす。爆発前の天体が決まった状態にあるので、あらゆるIa型超新星は絶対的な明るさが一定であると考えられる。よって、彼方の銀河で起きたIa型超新星を観測すれば、見かけの明るさからそこまでの距離を計算できるはずだ。この前提を元にして測られた数多くの銀河までの距離は、宇宙膨張速度の計算に使われるなど観測宇宙論の根幹に関わっている。
研究者のグループは、「すざく」でケプラーの超新星が残した残骸からのX線を観測して、そこに含まれる微量元素の量を調べた。そして爆発前の白色矮星に含まれていた水素・ヘリウム以外の重元素の割合を逆算したところ、太陽における重元素の割合に比べて3倍もあった。白色矮星に含まれる重元素の量は爆発の明るさに影響を与えるとする理論があるので、一定だとされてきたIa型超新星の明るさにはばらつきがあるかもしれない。Ia型超新星の観測を元に宇宙の膨張が加速していると発表した研究者たちが2011年にノーベル物理学賞を受賞しているが、今回の観測結果はこうした成果にも影響を与える可能性がある。
■Suzaku 'Post-mortem' Yields Insight into Kepler's Supernova
http://www.nasa.gov/mission_pages/astro-e2/news/post-mortem.html