幻の銀河とも呼ばれる渦巻銀河「M74」 ウェッブ宇宙望遠鏡が再び撮影

こちらは「うお座(魚座)」の方向約3200万光年先の渦巻銀河「M74(Messier 74)」です。M74は渦巻腕(渦状腕)がはっきりと目立つ、いわゆる「グランドデザイン渦巻銀河(grand design spiral galaxy)」に分類されています。

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の近赤外線カメラ(NIRCam)と中間赤外線観測装置(MIRI)で観測された渦巻銀河「M74(Messier 74)」幻の銀河とも呼ばれる。
【▲ ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の近赤外線カメラ(NIRCam)と中間赤外線観測装置(MIRI)で観測された渦巻銀河「M74(Messier 74)」(Credit: ESA/Webb, NASA & CSA, A. Adamo (Stockholm University) and the FEAST JWST team)】

“幻の銀河”をジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が再び観測

名称の「Messier(メシエ)」は、18世紀にフランスの天文学者シャルル・メシエがまとめた「メシエカタログ」に記載された天体であることを示しています。M74はメシエカタログの他の銀河よりも暗くて見えにくいことから、「Phantom Galaxy(幻の銀河)」とも呼ばれています。

この画像は「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(James Webb Space Telescope: JWST)」の「近赤外線カメラ(NIRCam)」と「中間赤外線観測装置(MIRI)」で取得したデータを使って作成されました。ウェッブ宇宙望遠鏡は人の目で捉えることができない赤外線の波長で主に観測を行うため、公開されている画像の色は取得時に使用されたフィルターに応じて着色されています。

ウェッブ宇宙望遠鏡は以前にも銀河における星形成をより深く理解するための観測プロジェクト「PHANGS(Physics at High Angular resolution in Nearby GalaxieS)」の一環としてM74を観測していて、その時の観測データを使った画像が2022年に公開されています。

一方、今回公開された画像では天の川銀河の外における恒星フィードバック(Stellar feedback)と星形成の間にある相互作用の解明を目的とした観測プロジェクト「FEAST(Feedback in Emerging extrAgalactic Star clusTers)」の一環として取得されたデータが使われています。欧州宇宙機関(ESA)によれば、恒星フィードバックとは星を形成する環境に対する星からのエネルギー流出を示す言葉で、星の形成速度を決める重要なプロセスだと考えられています。

ESAによると、FEASTを通じて取得されたウェッブ宇宙望遠鏡の観測データを通じて、研究者は他の銀河でどのように星が形成されているのか、星が星間物質を形成する上でどのように関与しているのかを学んでいます。ウェッブ宇宙望遠鏡の観測によって、ガスと塵(ダスト)から星を生み出す星形成領域がそこから新たに生まれた星によって最終的に破壊されるプロセスと星団の結び付きが明らかになった他に、FEASTで観測された銀河の渦巻腕は銀河内で星が最も活発に形成される場所であると結論付けられたということです。

冒頭の画像は“ウェッブ宇宙望遠鏡の今月の画像”として、ESAから2024年10月29日付で公開されています。

 

Source

  • ESA/Webb - Catching the edge of the Phantom Galaxy

文・編集/sorae編集部

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