10月、長かった今年の夏もそろそろ息をひそめ、涼しい風が吹き始める季節となりました。星空を見上げると、夏と秋、2つの季節の空の目印と、惑星の輝きが見られます。
夕方の西の空には金星が見られます。金星は太陽系の惑星の一つで、地上から見ると太陽と月の次に明るい星です。明るさは-3.9等級(※)で、「こと座」の1等星ベガの40倍程度の明るさです。
金星は内惑星(地球の内側を回る惑星)であり、夕方の西の空、もしくは明け方の東の空でしか見られません。夕方の金星は「宵の明星」と呼ばれ、親しまれています。
金星を西の地平線へ見送る頃、南西の空に夏の大三角が輝きだします。
夏の大三角を構成するのは「こと座」のベガ、「わし座」のアルタイル、「はくちょう座」のデネブという3つの1等星です。
「夏の」大三角という名称ですが、冬の初め頃まで西寄りの空で見られ、星を見つける良い目印になります。
南東へ目を移すと、秋の四辺形があります。2等星3つと、3等星1つからなる、正方形に近い形です。
秋の四辺形はペガスス座の体の星に当たります。四辺形の北西側に前足、南西側に首から頭や鼻先の星があり、線で結ぶと馬の姿になります。
ただし、上半身しかない上にさかさまになっているため、少し分かりづらいかもしれません。
秋の四辺形の南西側、ペガススの頭の下あたりには、小さな三ツ矢の星の並びがあります。これは「みずがめ座」の目印で、水がめの口の部分に当たります。
水がめから流れる水の先、南の空の低いところに1等星がありますが、こちらはみずがめ座の星ではありません。フォーマルハウト(魚の口)という名前で、「みなみのうお座」の口元の星です。
また、三ツ矢の南側、水がめからあふれる流れの中にも明るい星がありますが、こちらもみずがめ座の星ではありません。
この星は「土星」です。金星と同じく太陽系の惑星で、明るさは0.7等級(※)と、アルタイルとほぼ同じ明るさです。
土星の最大の特徴は本体を取り巻く環があることです。太陽系の惑星では木星や天王星、海王星にも環はありますが、家庭用の望遠鏡でも見えるほどの明確な環を持つのは土星しかありません。その美しい姿から、土星は「太陽系の宝石」とも呼ばれています。
しかし、今年の土星の環は細く見えます。これは地上から見て、土星の環の傾きが小さくなっているためです。
地球から見ると土星の傾きは年々変わり、それに合わせて環の傾きも変わっていきます。そして2025年には、環がほとんど見えなくなってしまいます。
望遠鏡をお持ちの方は、環の変化にも注目しながら、土星を観察してみてください。
※…金星、土星の等級は日本時間2024年10月15日0:00時点のもの(国立天文台暦計算室 今日のほしぞら参照)
2024年で最も大きく見える満月
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2024年10月17日の月は、年内で最も大きく見える満月です。
このように月の見かけの大きさが変わるのは、地球と月の距離が変化するためです。
月は地球の周りを、楕円軌道を描いて回っています。また、月の軌道は太陽や地球の重力の影響を受け変化しています。
そのため、月と地球の距離は複雑に変化しており、同じ満月でも距離が遠ければ小さく、近ければ大きく見えるのです。
2024年最小の満月は2月24日でした。
今回の満月を今年最小の満月と比較すると、視直径(天体の見かけの直径)は約14%大きくなります。
この2つの満月の大きさの差を身近なもので例えると、500円硬貨と10円硬貨(直径の差は約13%)が近いです。「意外と差があるな」と思われるのではないでしょうか。
最大の満月と最小の満月を撮影して比較すれば、大きさの差を実感できるでしょう。
しかし、実際の空では時期の異なる満月を硬貨のように並べることはできません。今年最大の月を見上げても、いつもより大きいと感じるのは難しいでしょう。
とはいえ、地球と月の距離が変わり、月の見かけの大きさが変わることを知っているだけで、地球が宇宙に浮かぶ惑星であり、月はその周りを回る衛星であることを実感できます。宇宙に想いを馳せながら、今年一番大きな満月を眺めてみてはいかがでしょうか。
source
- 国立天文台 - ほしぞら情報 東京の星空・カレンダー・惑星(2024年10月)
- 国立天文台 - ほしぞら情報 土星が見頃(2024年9月)
- 国立天文台 - ほしぞら情報 2024年で地球にいちばん近い満月(2024年10月)(2024年9月)
- 国立天文台 - 暦計算室 今日のほしぞら
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文・編集/sorae編集部