太陽系外縁部に未知の天体群が存在する可能性 すばる望遠鏡による観測成果
【▲ 国立天文台ハワイ観測所の「すばる望遠鏡」(左)と、アメリカ航空宇宙局(NASA)の無人探査機「New Horizons(ニュー・ホライズンズ)」の想像図(右)(Credit: 国立天文台/Southwest Research Institute)】

国立天文台(NAOJ)は2024年9月4日付で、ハワイ観測所の「すばる望遠鏡」に設置されている超広視野主焦点カメラ「Hyper Suprime-Cam(HSC、ハイパー・シュプリーム・カム)」を用いた観測を通じて、太陽系の外縁部にこれまで知られていなかった天体群が存在する可能性を示した研究成果を紹介しています。

【▲ 国立天文台ハワイ観測所の「すばる望遠鏡」(左)と、アメリカ航空宇宙局(NASA)の無人探査機「New Horizons(ニュー・ホライズンズ)」の想像図(右)(Credit: 国立天文台/Southwest Research Institute)】
【▲ 国立天文台ハワイ観測所の「すばる望遠鏡」(左)と、アメリカ航空宇宙局(NASA)の無人探査機「New Horizons(ニュー・ホライズンズ)」の想像図(右)(Credit: 国立天文台/Southwest Research Institute)】

すばる望遠鏡はアメリカ航空宇宙局(NASA)の無人探査機「New Horizons(ニュー・ホライズンズ)」のミッションと2004年から協力関係にあり、太陽系外縁部の構造の解明に貢献しています。2006年1月に打ち上げられたNew Horizonsは2015年7月に冥王星、2019年1月に太陽系外縁天体の「Arrokoth(アロコス)」のフライバイ観測に成功しており、現在も太陽系の外に向かって飛行しつつ観測を行っています。

視野の狭いNew Horizonsのカメラは探査対象になり得る新たな天体の捜索には向いていないため、その役割はすばる望遠鏡が担っています。国立天文台によると、2020年から始まったHSCによる観測の結果、2023年までに239個の太陽系外縁天体が発見されました。見つかった天体の大半は太陽から30~55天文単位の距離にあり、エッジワース・カイパーベルト(※太陽から約30~50天文単位の距離にある天体が密集して分布する領域)の中にあるとみられています。

ところが、70~90天文単位の距離でも11個が見つかっており、55~70天文単位の範囲は天体の数が少ない“谷間”のように見えることも確認されたといいます。この結果は研究者も予期しておらず、谷間の存在は他の観測でも報告されていないといいます。研究に参加した産業医科大学/千葉工業大学惑星探査研究センターの吉田二美さんは「70~90天文単位に新たな天体群があるのかもしれない。もしこれが確かならば大発見です。原始太陽系星雲はこれまで信じられていたよりもはるかに大きかったことになり、太陽系の惑星形成過程の研究に影響を与えるかもしれません」と指摘しています。

【▲ すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ「HSC」による観測で見つかった太陽系外縁天体の分布を示した図。国立天文台のプレスリリースから引用(Credit: Wesley Fraser)】
【▲ すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ「HSC」による観測で見つかった太陽系外縁天体の分布を示した図。国立天文台のプレスリリースから引用(Credit: Wesley Fraser)】

今回発見された天体の正確な軌道を決定するため、研究者たちはHSCを用いた観測を続けています。吉田さんは「遠方天体の発見とその軌道分布を明らかにすることは太陽系の形成の歴史の一端を紐解く重要な手がかりです。この研究は太陽系の形成史を知り、系外惑星系と比較し、普遍的な惑星形成を理解する足掛かりとして、重要な位置にあると思います」とコメントしています。

 

Source

文・編集/sorae編集部