2024年8月の星空情報 12日深夜にペルセウス座流星群が極大

8月、熱に包まれたかのような暑い日が続きます。

しかし、8月7日(※1)の立秋を過ぎると熱気の中に少しずつ涼しい風が混じり、夜になると秋の虫が歌声を響かせるようになるでしょう。

少しずつですが、季節は秋へ向かっているのです。

過ぎ行く夏を惜しむかのように、星空では夏の星々が明るく輝いています。

【▲ 2024年8月中旬 21時頃の東京の星空(Credit: 国立天文台)】

星空を見上げると、天頂付近に3つの1等星があります。

「こと座」のベガ、「わし座」のアルタイル、「はくちょう座」のデネブです。

 

実は、同じ1等星でもそれぞれ明るさが違います。

1等星とは、星の明るさを示す「等級」が1.5未満の星のことなので、星ごとに明るさが違うのです。

1等星の中で最も明るい星(おおいぬ座のシリウス)と暗い星(しし座のレグルス)では、13倍も明るさが違います。

 

夏の大三角の中で最も明るい1等星はベガです。明るさは0.03等級で、1等星の中でも5番目に明るい星です(※2)。

そのきらびやかな輝きから「真夏のダイヤモンド」という愛称で呼ばれることもあります。

街明かりの少ない場所であれば、ベガの近くに3~4等星の星からなる平行四辺形が見えます。この形を「ことの弦の部分」と覚えておくと良いでしょう。

 

次に明るい1等星はアルタイルです。明るさは0.76等級で、1等星としては明るい方ではありません。

アルタイルの両脇には3等星、4等星の星があり、結び合わせると一直線になります。

アルタイル(飛ぶ鷲)という名前の由来にもなったこの星の並びは、日本では2匹の犬を連れた人の姿になぞらえて、「イヌカイボシ」と呼ばれることもあります。

 

デネブは夏の大三角の中で最も暗い星です。明るさは1.25等級と、ベガの3分の1程度しかありません。

デネブには「しっぽ」という意味があり、はくちょう座の尾に当たる星です。

デネブから南に、胸の星に当たるサドル(2等星)、首の位置にあるη(イータ)星(4等星)、くちばしの星であるアルビレオ(3等星)と、ほぼ一直線に星が並び、交差して翼の星が伸びています。

デネブからアルビレオまでの4つの星は1等星~4等星と明るさが異なるため、星空の明るさを知る目安になります。

暗闇に目が慣れてきたら、夏の大三角の近くにある小さな星座も探してみましょう。

 

夏の大三角の東側には、小さなひし形の星の並びがあります。これは「いるか座」です。

4等星以下の星ばかりで構成されていますが、狭い場所に星が密集しているため、割と目立ちます。

 

いるか座の近くには「や座」があります。

アルタイルとデネブを結んだ線上の、アルタイルにごく近い場所にある細長いYの形の星の並びです。

や座の中で最も明るい星は3等星で、矢じりに当たります。そこから3つの4等星が並んで矢羽の形を作っている、小さいながら均整の取れた星座です。

 

星座の星の並びを丁寧にたどると、意外とリアルな形を作っていることが分かります。

人の目は暗闇に慣れるまで30分程度かかります。

夏の夜には、星空をじっくり眺めて星座の形を辿ってみてはいかがでしょうか。

 

※1…日付は2024年のもの。
※2…恒星単体の明るさ(見かけの等級)での順位。

 

2024年8月の天文情報

  • ペルセウス座流星群極大
【▲ 2024年8月12日23時頃の東京の空(Credit: USM, Redshift, Edit: sorae)】

2024年8月12日23時頃、ペルセウス座流星群が極大(※3)を迎えます。

ペルセウス座流星群は、ふたご座流星群、しぶんぎ座流星群と並ぶ三大流星群の1つで、明るい流星が数多く見られます。

特に、今年のペルセウス座流星群は観測条件も良好です。

流星群の観測条件は、流星群が極大を迎える時刻とその時の月齢によって毎年変わります。月明りの影響が少ないほど、また極大の時刻と放射点(※4)が高く上る時間が近いほど好条件となります。

今年の極大日の月齢は8です。上弦にごく近く、22時過ぎには沈みます。

また、極大の時刻である23時時点での放射点の高度は25度と、まずまずの高さです。

総じて条件は「良い」といえるでしょう。

極大時刻である8月12日23時から、放射点が高く上る13日未明にかけて、1時間に25~40個の流星が見られると予想されています。

流星群を見るコツは、空を広く見渡すことです。流星群は放射点から広がるように流れるため、放射点のある方角にこだわらず、空全体を見た方が見つけやすいのです。

暗闇に目が慣れるまで、夏の星座を探しながら、のんびりと流星の出現を待ってみましょう。

 

※3…極大:流星群が最も活発になること、またはその時期。
※4…放射点:流星が放射状に飛び出す中心の1点。流星群の名称は、放射点のある星座の名からつけられているものが多い。

 

  • 木星と火星が接近
【▲ 2024年8月15日0時30分頃の東京の空(Credit: USM, Redshift, Edit: sorae)】

2024年8月14日23時54分頃、木星と火星が非常に近くまで接近します。

この時の離角(※5)は約0.3度です。月の見かけの直径が約0.5度ですから、月の幅よりもさらに近くまで接近することになります。

ただし、最接近時の木星と火星は東の空に上るか上らないかというところで、観測は難しいかもしれません。

2つの惑星が見やすい高度に上る8月15日の午前2時頃から夜明け前までが絶好の観測時間です。

木星は-2.2等級(※6)、火星は0.9等級(※6)と明るさに差はありますが、火星は特徴的な赤い色をしているため、存在感は木星に負けないでしょう。

低倍率の望遠鏡でのぞくと、同一視野に木星と火星を観測できるうえ、木星の衛星(ガリレオ衛星)も一緒に見ることができます。

また、肉眼で空を広く見渡すと、接近した2つの惑星の周りに、冬の星座の鮮やかな1等星や、「おうし座」のプレアデス星団(すばる)が輝く様子を楽しめます。

木星と火星の接近の様子を望遠鏡でじっくり観測するのも、冬の1等星たちとの共演を眺めるのも楽しい今回の接近。8月15~16日頃はペルセウス座流星群もピークを過ぎてはいますが、まだ観測のチャンスはあります。

流星群と惑星の接近、2つの天文イベントが重なる今年のお盆、ご家族や親戚の皆さんと一緒に星空を見上げてみてはいかがでしょうか。

 

※5…離角:天球上で観測点から見た2つの天体間の距離を角度で表したもの。
※6…惑星の等級は2024年 8月15日2:00時点のもの(国立天文台暦計算室 今日のほしぞら参照)

 

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文・編集/sorae編集部