こちらは米国アリゾナ州のクインラン山地にあるキットピーク国立天文台に出現した虹です。はるか宇宙の彼方で輝く星々を観測する望遠鏡と、天の高みを目指してかけられた梯子のような虹の組み合わせが印象的な一枚。美しさを感じさせる光景ですが、実は虹と天体望遠鏡には科学的なつながりもあります。

【▲ 米国アリゾナ州のキットピーク国立天文台にかかる虹(Credit: KPNO/NOIRLab/NSF/AURA/D. Salman)】
【▲ 米国アリゾナ州のキットピーク国立天文台にかかる虹(Credit: KPNO/NOIRLab/NSF/AURA/D. Salman)】

キットピーク国立天文台では口径4メートルのメイヨール望遠鏡をはじめ、20台以上の光学望遠鏡や電波望遠鏡が様々な天体の観測に使用されています。望遠鏡は人間の目で見るのと同じような画像の取得だけでなく、天体から届いた電磁波の波長ごとの明るさを示した「スペクトル」を取得するための分光観測にも用いられます。スペクトルを得るにはプリズムで光を分散させる方法がありますが、この仕組みは太陽光が雨滴で屈折・分散されることで生じる虹と原理的には一緒。つまり虹は、雨滴を天然のプリズムとして得られた太陽光のスペクトルだと表現することもできるのです。

次の画像は、キットピーク国立天文台のマクマス-ピアス太陽望遠鏡で取得された太陽のスペクトルです。波長400~700ナノメートルにわたる細長い帯状のスペクトルを1枚の画像にまとめたもので、左から右、下から上へ進むにしたがって光の波長が長く、言い換えれば色が青から赤へと変化していきます。

-PR-

【▲ 参考画像:米国アリゾナ州のキットピーク国立天文台にあるマクマス-ピアス太陽望遠鏡で取得された太陽の高解像度スペクトル(波長400~700ナノメートル)(Credit: N.A. Sharp/KPNO/NOIRLab/NSO/NSF/AURA)】
【▲ 参考画像:米国アリゾナ州のキットピーク国立天文台にあるマクマス-ピアス太陽望遠鏡で取得された太陽の高解像度スペクトル(波長400~700ナノメートル)(Credit: N.A. Sharp/KPNO/NOIRLab/NSO/NSF/AURA)】

分光観測で得た太陽光の詳細なスペクトルにはいくつもの暗い部分が現れます。これは「吸収線(暗線)」と呼ばれるもので、原子・分子・イオンがそれぞれ決まった波長の電磁波を吸収することで生じます。これらの吸収線は発見者の名前にちなんでフラウンホーファー線とも呼ばれています。

天体のスペクトルには吸収線の他にも、原子などが決まった波長の電磁波を放つことで生じる明るい線「輝線」が現れることもあります。吸収線と輝線は合わせて「スペクトル線」とも呼ばれます。分光観測で得られたスペクトル線からは、その天体の化学組成や視線方向(※観測者に対して近付いたり遠ざかったりする方向)の運動速度などを知ることができます。

【▲ 参考動画:系外惑星の公転にともなって主星のスペクトルが変化する様子を示した動画】
(Credit: ESO/L. Calçada)

たとえば近年盛んに研究が進められている太陽系外惑星の分野では、惑星の公転にともなってわずかに揺れ動く恒星の動きをスペクトル線の周期的な変化として捉えることができます。恒星の動きをもとに系外惑星の情報を得る手法は「視線速度法」や「ドップラーシフト法」と呼ばれていて、惑星の公転周期や最小質量を求めることができます。

【▲ 参考画像:透過スペクトルに現れた吸収線をもとに惑星の大気に存在する物質を調べる方法を示したイメージ図(Credit: ESA)】
【▲ 参考画像:透過スペクトルに現れた吸収線をもとに惑星の大気に存在する物質を調べる方法を示したイメージ図(Credit: ESA)】

また、大気を持つ惑星が恒星の手前を横切る「トランジット」という現象を起こしている時の恒星のスペクトルは透過スペクトルと呼ばれていて、惑星の大気を通過してきた光がごくわずかに含まれています。透過スペクトルをトランジットが起きていない時のスペクトルと比較すると、透過スペクトルに現れた吸収線をもとに惑星の大気に存在する物質を調べることができます。このように、現代の天文学では分光観測を通して天体の様々な情報を得ているのです。

冒頭のキットピーク国立天文台にかかる虹の画像は、NOIRLabから“今週の画像”として2024年3月20日付で公開されています。

 

Source

  • NOIRLab - Primitive Spectroscopy above KPNO

文/sorae編集部

-ads-

-ads-