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惑星の大きさと質量から求められる惑星の密度(平均密度)は、惑星に軽い物質が多く含まれるほど低く、中には「土星」のように水よりも低い値となる場合もあります。太陽系以外の惑星である「太陽系外惑星」の場合、恒星からの熱で膨張することで、さらに密度が低くなっているものもあります。では、惑星の密度はどこまで低くなることが可能なのでしょうか。

ハーバード・スミソニアン天体物理学センターのStephanie Yoshida氏などの研究チームは、NASA(アメリカ航空宇宙局)の宇宙望遠鏡「TESS(トランジット系外惑星探索衛星)」が観測した直径と質量の値をもとに、太陽系外惑星「TOI-1420b」の平均密度が1立方cmあたり0.082gという低密度なタイプの発泡スチロールとほぼ同じ値であると算出しました。TOI-1420bの年齢が古いことを考慮すると、これは興味深い結果でもあります。

■とても低密度な惑星「パフィー・プラネット」

【▲図: パフィー・プラネットの1つであるWASP-107b(黒い影のように描かれている天体)の想像図。 (Image Credit: ESA, Hubble, NASA, M. Kornmesser) 】
【▲図: パフィー・プラネットの1つであるWASP-107b(黒い影のように描かれている天体)の想像図(Credit: ESA, Hubble, NASA, M. Kornmesser)】

太陽系の惑星の密度は、最も高い地球の1立方cmあたり5.513gから、最も低い土星の1立方cmあたり0.687gまで様々です。土星の密度が水よりも低い値なのは、気体が主体の「巨大ガス惑星」であり、土星本体の大部分が水素とヘリウムでできているためです。

太陽系の外に視野を広げると、土星よりもさらに密度が低いとみられる惑星も幾つか見つかっています。このような惑星は、木星や土星と同じような巨大ガス惑星であることに加えて、「ホット・ジュピター」であることが低密度の理由となっています。ホット・ジュピターは恒星から極めて近い距離を公転しているので、恒星からの放射で熱せられて大気が膨張し、直径が拡大します。その結果、同程度の質量を持つ低温の惑星と比べて密度は低くなります。こうした惑星のなかでも特に低密度な惑星は「パフィー・プラネット(Puffy planets)」とも呼ばれています (※)

※… “Puffy planets” は、直訳すれば「フワフワとした惑星」「膨らんでいる惑星」となります。どの程度の密度の天体をパフィー・プラネットと呼ぶのかは定義されておらず、学術的な分類名というわけでもありません。このため、パフィー・プラネットという分類は愛称に近いものです。

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■「TOI-1420b」の密度は発泡スチロール並と判明

Yoshida氏などの研究チームは、TESSの観測データで得られた惑星候補「TOI-1420b」についての研究を行いました。TOI-1420bは、地球から見て「ケフェウス座」の方向に約660光年離れた恒星「TOI-1420」の周りを公転する惑星です。今回の研究では「ロケ・デ・ロス・ムチャーチョス天文台」(スペイン領カナリア諸島、ラ・パルマ島)にあるイタリア国立ガリレオ望遠鏡に設置された視線速度分光器「HARPS-N」の観測データを元にTOI-1420bの質量が推定され、TESSのトランジット法による直径の推定値と合わせてTOI-1420bの密度が推定されました。

その結果、地球と比較してTOI-1420bの直径は11.89±0.33倍もあるのに対して、質量は25.1±3.8倍しかないことが判明しました。言い換えれば、TOI-1420bの大きさは木星とほぼ同じであるにも関わらず、質量は木星の約8%しかないことになります。ここから算出されるTOI-1420bの密度は1立方cmあたり0.082±0.015gで、低密度なタイプの発泡スチロールとほぼ同じ値となっています。

TOI-1420bがこれほど低密度なのは、恒星TOI-1420のすぐ近くを公転しているからだと推定されます。実際、TOI-1420bはTOI-1420から約1100万km(約0.073天文単位)の距離を6.96日周期で公転しており、表面温度は680℃だと推定されています。この高温がTOI-1420bを膨張させて、パフィー・プラネットにしていると考えられます。

■TOI-1420bはパフィー・プラネットの基準となる可能性

現在のところ、TOI-1420bは質量が地球の50倍未満の惑星の中では直径が最大の惑星としての記録を持ちます。しかし、単純な密度の比較ではTOI-1420bに匹敵するか、あるいはそれを下回る低密度のパフィー・プラネットも見つかっています。このためTOI-1420bは最も低密度な惑星というわけではありませんが、惑星科学の観点からは、他のパフィー・プラネットよりも興味深い観測対象の1つです。

まず、TOI-1420bは多くの観測データが得られており、他のパフィー・プラネットと比べて詳細な研究が可能です。例えば、今回の研究ではTOI-1420b全体に占めるガス成分の割合が約82%であると計算されており、TOI-1420bの中心部には質量が地球の4倍程度の岩石の核(コア)があると推定されます。このような基本的なデータは、パフィー・プラネットがどのようにして形成されたのかを研究するための重要なデータです。

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また、恒星TOI-1420は太陽と同じG型主系列星であり、年齢は107億年未満と推定されています。恒星と同じ年齢だと推定されるTOI-1420bがパフィー・プラネットであることは、それだけでもとても興味深いものです。これほどまでに熱膨張している惑星の大気上層部では、重力を振り切って脱出する気体成分が多いと考えられます。すると、低密度の理由となる気体成分が徐々に失われてしまうため、惑星の密度は高くなるはずなのです。

TOI-1420bは100億年以上も大気を流出させ続けているパフィー・プラネットなのか、それとも公転軌道の変化などで最近になってパフィー・プラネットになったのかは現時点では判明していませんが、パフィー・プラネットがどうやって誕生するのかを調べる上で、TOI-1420bは標準的な観測対象となる可能性があります。また、研究の過程で観測される大気の流出状況は、他の惑星の大気科学にも応用される可能性があります。

 

Source

文/彩恵りり

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