トリノ大学の博士課程学生Elisa Goffoさんを筆頭とする研究チームは、「ほ座」(帆座)の方向約31光年先の太陽系外惑星「GJ 367b」(グリーゼ367b)の平均密度が1立方cmあたり約10.2gだとする研究成果を発表しました。この値は地球の平均密度(1立方cmあたり5.51g)の1.85倍であり、GJ 367bが主に鉄でできている可能性を示しているといいます。研究チームの成果をまとめた論文はThe Astrophysical Journal Lettersに掲載されています。

【▲ 太陽系外惑星「GJ 367b」(左)の想像図(Credit: DLR/SPP1992 (Patricia Klein))】
【▲ 太陽系外惑星「GJ 367b」(左)の想像図(Credit: DLR/SPP1992 (Patricia Klein))】

GJ 367bはアメリカ航空宇宙局(NASA)の系外惑星探査衛星「TESS」(テス)の観測データをもとに2021年に発見が報告された系外惑星で、主星である赤色矮星「GJ 367」(グリーゼ367、太陽と比べて半径は約0.458倍、質量は約0.455倍)から平均約0.007天文単位(※)離れた軌道を約7.7時間周期で公転していて、表面温度は約1100℃と推定されています。GJ 367bのように公転周期が1日を下回るような惑星は超短周期(Ultra-Short Period:UPS)惑星とも呼ばれています。

※…1天文単位(au)=約1億5000万km、太陽から地球までの平均距離に由来。0.007天文単位=約105万km、太陽から水星までの平均距離の約55分の1。

なお、GJ 367星系は国際天文学連合(IAU)が2022年に実施した太陽系外惑星命名キャンペーンの命名対象に選ばれており、実施時点で発見済みだったGJ 367bは「Tahay(タハイ)」、主星のGJ 367は「Añañuca(アニャニュカ)」と命名されています。

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研究チームによると、GJ 367bの半径は地球の約0.699倍、質量は地球の約0.633倍であることがわかりました。ここから導き出された平均密度は前述の通り1立方cmあたり約10.2gです。GJ 367bの質量を正確に測定するために、研究チームはラ・シヤ天文台(チリ)にある欧州南天天文台(ESO)の3.6m望遠鏡に取り付けられている高精度視線速度系外惑星探査装置「HARPS」(High Accuracy Radial Velocity Planet Searcher)を用いて視線速度法(後述)による観測を実施しました。

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GJ 367bの内部構造を分析した研究チームは、質量全体のうち約91パーセントを鉄でできたコア(中心核)が占めていると考えています。これまでに5500個以上が見つかっている系外惑星のなかでもこれほど平均密度が高いものはめずらしく、GoffoさんはGJ 367bがもともと鉄の豊富な環境で形成されたか、あるいはGJ 367bが形成された後で鉄のコアを取り囲んでいた岩石質のマントルが剥ぎ取られた可能性に言及しています。

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また、研究チームによるESO 3.6m望遠鏡を用いた観測の結果、トランジット法(後述)を利用するTESSの観測では見つかっていなかった2つの惑星「GJ 367c」および「GJ 367d」が新たに発見されました。最小質量はGJ 367cが地球の約4.13倍、GJ 367dが地球の約6.03倍で、公転周期はGJ 367cが約11.5日、GJ 367dが約34.4日とされています。超短周期惑星の形成や移動をさらに調査する上で、小さく高密度な惑星であるGJ 367bを含むこの惑星系は格好の対象だとして研究チームは期待を寄せています。

■系外惑星の代表的な探査方法「トランジット法」と「視線速度法」

系外惑星の観測では「トランジット法」と「視線速度法(ドップラーシフト法)」という2つの手法が主に用いられています。

「トランジット法」とは、系外惑星が主星(恒星)の手前を横切る「トランジット(transit)」を起こした際に生じる主星の明るさのわずかな変化をもとに、系外惑星を間接的に検出する手法です。

繰り返し起きるトランジットを観測することで、その周期から系外惑星の公転周期を知ることができます。また、トランジット時の主星の光度曲線(時間の経過にあわせて変化する天体の光度を示した曲線)をもとに、系外惑星の直径や大気の有無といった情報を得ることも可能です。

【▲ 系外惑星のトランジットによって恒星の明るさが変化する様子を示した動画】
(Credit: ESO/L. Calçada)

もう一つの「視線速度法(ドップラーシフト法)」とは、系外惑星の公転にともなって円を描くようにわずかに揺さぶられる主星の動きをもとに、系外惑星を間接的に検出する手法です。

惑星の公転にともなって主星が揺れ動くと、光の色は主星が地球に近付くように動く時は青っぽく、遠ざかるように動く時は赤っぽくといったように、周期的に変化します。こうした主星の色の変化は、天体のスペクトル(波長ごとの電磁波の強さ)を得る分光観測を行うことで検出されています。視線速度法の観測データからは系外惑星の公転周期や最小質量を求めることができます。

【▲ 系外惑星の公転にともなって主星のスペクトルが変化する様子を示した動画】
(Credit: ESO/L. Calçada)

 

Source

  • University of Turin – A planet with an iron heart in an extrasolar system: the discovery made by a team at the University of Turin adds to the puzzle how planets form
  • Goffo et al. – Company for the Ultra-high Density, Ultra-short Period Sub-Earth GJ 367 b: Discovery of Two Additional Low-mass Planets at 11.5 and 34 Days (The Astrophysical Journal Letters)

文/sorae編集部

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