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スペイン宇宙生物学センター(CAB)の学生Olga Balsalobre-Ruzaさんを筆頭とする研究チームは、太陽系外惑星「PDS 70 b」と公転軌道を共有する別の系外惑星が存在する可能性を示した研究成果を発表しました。この結果は、同じ軌道を公転する“兄弟”のような2つの惑星が実在することを示す有力な証拠となるかもしれません。

PDS 70 bは「ケンタウルス座」の方向約370光年先の若い星「PDS 70」を公転しています。PDS 70は誕生から540万年程度しか経っていないと考えられていて、その周囲は広い空洞が生じた原始惑星系円盤に取り囲まれています。空洞ではPDS 70 bとその外側を公転する「PDS 70 c」という2つの系外惑星が見つかっており、形成過程にある惑星系の一例として研究対象になっています。

【▲ アルマ望遠鏡で観測された若い星PDS 70。中央の大きな円は太陽系外惑星PDS 70 bの公転軌道、小さな実線の円はPDS 70 bの位置、小さな点線の円は今回検出が報告されたデブリの雲の位置を示している。リング状の構造はPDS 70を取り囲む原始惑星系円盤で、空洞内の3時方向にはPDS 70 cも捉えられている(Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO) /Balsalobre-Ruza et al.)】
【▲ アルマ望遠鏡で観測された若い星PDS 70。中央の大きな円は太陽系外惑星PDS 70 bの公転軌道、小さな実線の円はPDS 70 bの位置、小さな点線の円は今回検出が報告されたデブリの雲の位置を示している。リング状の構造はPDS 70を取り囲む原始惑星系円盤で、空洞内の3時方向にはPDS 70 cも捉えられている(Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO) /Balsalobre-Ruza et al.)】

研究チームがチリの電波望遠鏡群「アルマ望遠鏡(ALMA)」を使用して過去に取得されたPDS 70の観測データを分析したところ、PDS 70とPDS 70 bのラグランジュ点の1つ「L5」付近で微弱な信号が検出されていたことがわかりました。分析の結果、PDS 70 bのL5点付近には地球の月の0.03~2倍に相当する総質量のデブリ(残骸)の雲が存在することが判明したといいます。

ラグランジュ点とは、ある天体「A」を別の天体「B」が円形の軌道で公転している時に、天体AやBと比べて質量がずっと小さな天体「C」が(天体AとBに対して)静止した状態を保てる5つの場所を指す言葉です。たとえば太陽と木星のラグランジュ点のうち、木星の公転軌道上にあるL4点付近(公転する木星の前方)とL5点付近(同・後方)には数多くの小惑星が分布していることが知られており、これらは「木星のトロヤ群(※)」というグループに分類されています。ちなみに地球と月のラグランジュ点については「機動戦士ガンダム」シリーズでスペースコロニーが配置されている場所としてご存知の方も多いかもしれません。

※…このグループで最初に見つかった小惑星にトロイア戦争の英雄にちなんだ名前が付けられたことから「トロヤ群」と呼ばれるようになりました。

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【▲ 参考画像:太陽(黄)を中心に、水星~木星までの惑星(白)と木星のトロヤ群小惑星(緑)の位置を示したアニメーション。トロヤ群小惑星は木星(Jupiter)に先行するL4点のグループと、後続するL5点のグループに分かれている(Credit: Astronomical Institute of CAS/Petr Scheirich (used with permission))】
【▲ 参考画像:太陽(黄)を中心に、水星~木星までの惑星(白)と木星のトロヤ群小惑星(緑)の位置を示したアニメーション。トロヤ群小惑星は木星(Jupiter)に先行するL4点のグループと、後続するL5点のグループに分かれている(Credit: Astronomical Institute of CAS/Petr Scheirich (used with permission))】

今回PDS 70 bのL5点付近で発見されたデブリの雲について研究チームは、これから形成される惑星の材料か、あるいはすでに形成された惑星の残余物が検出されたと考えています。つまり、研究チームが発見したのは“PDS 70 bと同じ軌道を公転しているもう1つの惑星”の存在を示す証拠なのではないかというわけです。

研究チームによれば、ある惑星のL4点やL5点に同程度の質量を持つ別の惑星が長期的に安定して存在する可能性は20年ほど前から提唱されていたといいます。そのような惑星は「軌道共有惑星(co-orbital planets)」あるいは「トロヤ惑星(Trojan planet)」と呼ばれていますが、これまでその存在を示す確実な証拠は得られていませんでした。研究に参加したCABの主任研究員Jorge Lillo-Boxさんは「存在することは理論上認められていますが、誰も検出したことはありません」とコメントしています。

Balsalobre-Ruzaさんが「1年の長さや居住可能性を共有する2つの世界を誰が想像できるでしょうか。私たちが取り組んだのは、そのような世界が実在する可能性を示す最初の証拠なのです」と語る今回の成果は、さらに踏み込んだ疑問をもたらしました。研究に参加したヨーロッパ南天天文台(ESO)のItziar De Gregorio-Monsalvoさんは「様々な惑星系におけるトロヤ惑星の形成、進化、出現する頻度についての新たな疑問が生まれました」とコメントしています。

【▲ アーティストによる太陽系外惑星PDS 70 bとデブリの雲のアニメーション。今回の研究成果をもとに作成】
(Credit: ESO/L. Calçada)

ただし、今回の研究で示されたのは暫定的な検出であり、確認するには追加の観測が必要です。研究チームは早ければ2026年2月にもアルマ望遠鏡による再観測が可能だとしており、PDS 70 bとデブリの雲が同じ軌道に沿って運動する様子が観測されることに期待を寄せています。研究チームの成果をまとめた論文はAstronomy & Astrophysicsに掲載されています。

 

Source

  • Image Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO) /Balsalobre-Ruza et al.
  • ESO – Does this exoplanet have a sibling sharing the same orbit?
  • Balsalobre-Ruza et al. – Tentative co-orbital submillimeter emission within the Lagrangian region L5 of the protoplanet PDS 70 b (Astronomy & Astrophysics)
  • NASA – How Were the Trojan Asteroids Discovered and Named?
  • 天文学辞典 – ラグランジュ点

文/sorae編集部

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