まずは「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(James Webb Space Telescope:JWST)」の観測データをもとに作成されたこちらの動画をご覧下さい。視野いっぱいに広がる天体はすべて銀河です。大小様々な銀河の間をすり抜けるように進んでいく視点は、最後に遥か彼方に潜んでいた1つの銀河の手前で止まります。

【▲ CEERS: Flight to Maisie’s Galaxy】
(Credit: Visualization: Frank Summers (STScI), Greg Bacon (STScI), Joseph DePasquale (STScI), Leah Hustak (STScI), Joseph Olmsted (STScI), Alyssa Pagan (STScI); Science: Steve Finkelstein (UT Austin), Rebecca Larson (RIT), Micaela Bagley (UT Austin); Music: Spring Morning, Maarten Schellekens CC BY-NC 4.0)

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ウェッブ宇宙望遠鏡を運用する宇宙望遠鏡科学研究所(STScI)によると、動画には国際研究チーム「CEERSコラボレーション」が観測した約5000個の銀河が登場します。これらの銀河は「おおぐま座」と「うしかい座」にまたがる「Extended Groth Strip」と呼ばれる観測領域に分布する約10万個の銀河の一部です。この領域は「ハッブル宇宙望遠鏡(Hubble Space Telescope:HST)」によって2004年~2005年にかけて最初に観測されました。

冒頭の動画では、地球から数十億光年の距離にある銀河からより遠くの宇宙に存在する銀河へと時代を遡るようにして、毎秒2億光年というスピードで視点が進んでいきます。動画の最後に写されるのはビッグバンから約3億9000万年後、つまり今から約134億年前に形成されたと考えられている銀河で、研究チームは「Maisie’s Galaxy(メイジーの銀河)」と呼んでいます。

「以前は“メイジーの銀河”のような銀河は見えず、研究することはできませんでした。今ではそのような銀河を画像から見つけるだけでなく、それが何でできているのか、近傍の銀河とはどのような違いがあるのかを知ることができます」(ロチェスター工科大学のRebecca Larsonさん、CEERSコラボレーションの一員)

【▲ ハッブル宇宙望遠鏡で撮影された観測領域「Extended Groth Strip」の一部。2007年5月6日に公開されたもの(Credit: NASA, ESA, and M. Davis (University of California, Berkeley))】
【▲ ハッブル宇宙望遠鏡で撮影された観測領域「Extended Groth Strip」の一部。2007年5月6日に公開されたもの(Credit: NASA, ESA, and M. Davis (University of California, Berkeley))】

STScIによれば、CEERSによるウェッブ宇宙望遠鏡の観測データとハッブル宇宙望遠鏡の観測データを組み合わせることで、それが本当に遠方宇宙に存在する銀河なのか、それとも塵に隠されて可視光では見えにくい近くの銀河なのかを見極めることができました。これらの初期の銀河における星形成を学ぶことが、研究チームの次なる目標です。

CEERSプログラムの主任研究員を務めるテキサス大学オースティン校のSteven Finkelsteinさんは「銀河は穏やかに成長すると考えることに私たちは慣れていますが、おそらくこれらの銀河の星々は爆竹のように形成されたのでしょう。こうした銀河は予想よりも多くの星を形成したのか、形成された星は予想よりも重いのか。観測データはそのような問いを導き出すための情報を与えてくれましたが、答えを得るにはさらに多くの観測データが必要です」とコメントしています。

冒頭の動画はSTScIから2023年7月10日付で公開されています。

 

※記事中の距離は天体から発した光が地球で観測されるまでに移動した距離を示す「光路距離」(光行距離)で表記しています。

Source

  • Movie Credit: Visualization: Frank Summers (STScI), Greg Bacon (STScI), Joseph DePasquale (STScI), Leah Hustak (STScI), Joseph Olmsted (STScI), Alyssa Pagan (STScI); Science: Steve Finkelstein (UT Austin), Rebecca Larson (RIT), Micaela Bagley (UT Austin); Music: Spring Morning, Maarten Schellekens CC BY-NC 4.0
  • Image Credit: NASA, ESA, and M. Davis (University of California, Berkeley)
  • STScI – New 3D Visualization Highlights 5,000 Galaxies Revealed by Webb in CEERS Survey
  • STScI – Hubble Pans Across Heavens to Harvest 50,000 Evolving Galaxies
  • NASA – New 3D Visualization Highlights 5,000 Galaxies Revealed by Webb

文/sorae編集部

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