こちらは「ほ座」(帆座)の方向約1億2000万光年先の特異銀河「NGC 3256」です。NGC 3256は2つの渦巻銀河が正面から衝突したことで形成されたと考えられており、現在観測されているのは衝突から約5億年が経った姿だと考えられています。

【▲ ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の近赤外線カメラ(NIRCam)と中間赤外線観測装置(MIRI)で観測された特異銀河「NGC 3256」(Credit: ESA/Webb, NASA & CSA, L. Armus, A. Evans)】
【▲ ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の近赤外線カメラ(NIRCam)と中間赤外線観測装置(MIRI)で観測された特異銀河「NGC 3256」(Credit: ESA/Webb, NASA & CSA, L. Armus, A. Evans)】

この画像は「ジェイムズ・ウェッブ(James Webb)宇宙望遠鏡」の「近赤外線カメラ(NIRCam)」と「中間赤外線観測装置(MIRI)」で取得したデータをもとに作成されました。ウェッブ宇宙望遠鏡は人の目で捉えることができない赤外線の波長で主に観測を行うため、公開されている画像の色は取得時に使用されたフィルターに応じて着色されています(※)

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※…この画像ではNIRCamで捉えた1.5μmを青、2.0μmをシアン、3.35μmを黄、4.44μmをオレンジで、MIRIで捉えた5.6μmをオレンジ、7.7μmと15μmを赤で着色しています。

欧州宇宙機関(ESA)によれば、“銀河どうしの衝突”といっても星と星の間には広大な星間空間が広がっているため、2つの銀河は実際には煙のように互いを通過し、やがて混ざり合っていきます。星どうしの衝突による壊滅的な光景が広がるわけではありませんが、代わりにそれぞれの銀河に存在するガスと塵が相互作用することで、大質量の恒星が短期間で数多く誕生する爆発的な星形成活動(スターバースト)が引き起こされることがあります。

ウェッブ宇宙望遠鏡が捉えたNGC 3256の画像では、星形成活動の起きている場所が明るく写っています。幼い星は塵に妨げられにくい赤外線の波長で最も明るく輝くため、赤外線観測に特化したウェッブ宇宙望遠鏡にとって格好の観測対象だといいます。NGC 3256のように赤外線で明るく輝く銀河(高光度赤外線銀河)をウェッブ宇宙望遠鏡で観測することは、新たな星が活発に形成されている銀河(星形成銀河)の複雑な歴史を解明する上で役立つということです。

冒頭の画像は“ウェッブ宇宙望遠鏡の今月の画像”として、ESAから2023年7月3日付で公開されています。

 

Source

  • Image Credit: ESA/Webb, NASA & CSA, L. Armus, A. Evans
  • ESA/Webb – Clash of the Titans

文/sorae編集部

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