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これまでに発見されている「太陽系外惑星」の多くを占める「ホットジュピター」と呼ばれるタイプの惑星は、その形成過程が注目されています。これまで、ホットジュピターは “孤独” であり、同じ惑星系に他の惑星は存在しないと考えられてきました。しかし今回、安徽師範大学のDong-Hong Wu氏などの研究チームは、ホットジュピターが存在する惑星系の12%には別の惑星も存在する可能性があることを示しました。この成果は、ホットジュピターを含む全ての惑星の形成過程を考える上で影響を与える可能性があります。

【▲ 図1: ペガスス座51番星bの想像図。世界で初めて見つかった恒星の周囲を回る惑星は、太陽系しか知らなかった私たちには常識外れなため、大きな衝撃を与えた。 (Image Credit: NASA / JPL-Caltech) 】
【▲ 図1: ペガスス座51番星bの想像図。世界で初めて見つかった恒星の周囲を回る惑星は、太陽系しか知らなかった私たちには常識外れなため、大きな衝撃を与えた(Credit: NASA / JPL-Caltech)】

太陽以外の恒星の周りで惑星が初めて見つかったのは1995年のことです。最初のケースとなった「ペガスス座51番星b」の発見は天文学者を驚かせました。その理由は、木星と比べて少し小ぶりな巨大ガス惑星が、太陽とほぼ同じ大きさの恒星をたった4.2日周期で公転しているからです。

太陽系で最も太陽に近い惑星である水星でも、公転周期は88日です。木星のような巨大ガス惑星は水星よりもずっと遠い軌道を数十年~数百年かけて公転していることを考えれば、ペガスス座51番星bは主星に対して異常に近いことになり、太陽系しか知らなった私たちにとって常識はずれな惑星系でした。

当初はペガスス座51番星bの存在自体が疑われたものの、その発見を皮切りに似たような惑星が続々と見つかるようになったことで、このようなタイプの惑星の存在は疑いようのない事実として受け止められるようになり、「高温の木星型惑星」を意味するホットジュピターという呼び名が与えられるまでになりました。

しかし、最初の発見から30年近くが経った現在でも、ホットジュピターの形成過程は不明のままです。観測体制の構築が進んだことで、ホットジュピターよりも少しだけ遠くを公転する「ウォームジュピター」(ここでは公転周期が10日~300日のホットジュピター)と呼ばれるサブタイプの惑星も数多く見つかるようになりました。また、太陽系と同程度か、さらに遠くを公転する巨大ガス惑星も発見されています。それにもかかわらずホットジュピターが大量に見つかったという事実は、宇宙ではそのような惑星が形成されることも珍しくはないことを示しています (※) 。

※…ホットジュピターが大量に見つかっているのは、そのような惑星が見つけやすいという観測バイアスもあります。ただし絶対数が多いことは、バイアスを考慮してもなお存在が珍しくないことを示しています。

これまでの惑星形成論では、巨大ガス惑星は恒星から遠く離れた場所で誕生する、と一般的に考えられています。巨大ガス惑星の素となるガスは、誕生したばかりの恒星の放射によって惑星系の外側へと押しやられていきます。恒星の近くではガスをまとう前にガスそのものが消えてしまう一方で、恒星から遠くでは十分な時間があると考えられます。そのような外側で誕生した惑星が恒星のかなり近くまで移動するには、途中で彗星のような細長い(離心率の大きい)楕円軌道に移行するプロセスが必要であるという説が有力です。シミュレーションの結果、このような軌道はやがて潮汐力の作用によって小さな円形の軌道へ自然に移行することが示されています。

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形成された場所から恒星の近くへ移動するまでの間、巨大ガス惑星が過渡的に周回することになると考えられているこの楕円軌道は、他の惑星との重力的な相互作用によって発生すると考えるのが最も自然です。巨大ガス惑星の公転軌道が楕円軌道に変化し、さらに小さな軌道へと変化する過程では別の惑星の近くを通過することになります。すると、巨大ガス惑星の接近によって他の惑星の軌道も変化し、恒星に落下したり恒星の重力を振り切って離脱してしまったりする確率が上がります。結果としてホットジュピターは、同じ惑星系に他の惑星が存在しない “孤独” な惑星であるという説が有力でした。

しかしWu氏は、この定説に疑問を投げかける研究結果を発表しました。その背景には、ホットジュピターを含む複数の惑星が存在する「WASP-47」や「ケプラー730」といった惑星系が近年になって続々と発見されていることがあります。こうした惑星系の存在は先述の軌道変化では説明できず、少なくともホットジュピターの一部は別の方法で形成された可能性を示唆しています。

提案されているのは、ホットジュピターは最初から恒星にかなり近い場所で直接形成され、公転軌道はほぼ変化しなかったとするプロセスです。これなら複数の惑星が存在することを説明できますが、今度はそれほど恒星に近い場所でどうすれば巨大ガス惑星が形成されるのかが大きな謎となってしまいます。これを知るには、恒星の近くで形成されたホットジュピターがどの程度の割合を占めているのかを知る必要があります。

Wu氏らは、アメリカ航空宇宙局 (NASA) の宇宙望遠鏡「ケプラー」のデータからホットジュピターの「TTV(Transit Timing Variations)」を調べることで、ホットジュピターが存在する惑星系にどの程度の割合で他の惑星が存在するのかを調べました。

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ケプラーは惑星が恒星の手前を横切り、光の一部を隠す「トランジット」が起きた時の減光を検出することで惑星を発見するために打ち上げられた宇宙望遠鏡です。トランジットのタイミングは惑星の公転周期に従っているため、通常は一定です。しかし、ホットジュピターの近くに他の惑星が存在する場合、その重力の影響でホットジュピターの公転速度がわずかに変化するため、恒星の手前を横切るタイミングが変化します。トランジットのタイミングの差分をもとに惑星の存在を調べるのが、TTVと呼ばれる手法です。タイミングに生じる変化は極めてわずかであるため、他のノイズと紛れやすく、観測が困難です。

【▲ 図2: 今回の研究で導き出された、ホットジュピターの近くに他の惑星がある確率。公転周期が1日~3日のホットジュピターでも約3割は近くに他の惑星が存在することになる。 (Image Credit: Wu, Rice & Wang) 】
【▲ 図2: 今回の研究で導き出された、ホットジュピターの近くに他の惑星がある確率。公転周期が1日~3日のホットジュピターでも約3割は近くに他の惑星が存在することになる(Credit: Wu, Rice & Wang)】

Wu氏は4年分の膨大なデータを分析し、ケプラーのデータからTTVを検出することに成功しました。以前に行われた同様の研究ではTTVの検出に失敗していたため、TTVの検出成功そのものが大きな成果の1つです。

このデータを元に分析を行ったところ、ホットジュピターの12±6%、ウォームジュピターの70±16%は、重力の影響を受けるほどの近くに他の惑星が存在する可能性が高いことが分かりました。特に公転周期が1日~3日のホットジュピターに限れば、そのうちの約3割(29.1±29.1%)が他の惑星とともに存在するという結果となりました。これはホットジュピターが “孤独” な存在だとする従来の観測結果に大きく異を唱える結果です。

今回の研究結果は、例えばお互いの惑星の軌道面の角度が揃っているのかどうかといったデータが不足しているため、これ以上深く考察することはできません。とはいえ、従来のホットジュピターのイメージを書き換えるには十分な成果です。

もしも巨大ガス惑星が恒星の近くで誕生する可能性は低くないとする場合、それは従来の惑星形成論に重大な欠陥があることを意味します。もしかすると、太陽系のように内惑星が小さくて外惑星が大きい惑星系は、宇宙では少数派なのかもしれません。今回の研究はホットジュピターだけでなく、太陽系を含めた全ての惑星系の形成過程を書き換えることにつながるかもしれません。

 

Source

文/彩恵りり

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