宇宙には無数の恒星が存在しています。では、宇宙最初の恒星はどのような姿をしていたのでしょうか?

【▲ 図1: 初期の宇宙で起こった超大質量星の超新星爆発の想像図。恒星の寿命は質量に反比例して短くなるため、最も重い恒星が最初に超新星爆発を起こしたと考えられる。 (Image Credit: 中国国家天文台) 】
【▲ 図1: 初期の宇宙で起こった超大質量星の超新星爆発の想像図。恒星の寿命は質量に反比例して短くなるため、最も重い恒星が最初に超新星爆発を起こしたと考えられる(Credit: 中国国家天文台)】

宇宙で最初に誕生した恒星は水素とヘリウムのみでできており、質量は太陽の140倍から260倍という、現在の宇宙にはほとんど存在しない巨大な恒星だったと推定されています。

質量が太陽の8倍以上ある恒星は生涯の最後に超新星爆発が起こりますが、これほど重い恒星の場合は、通常とは異なるプロセスを経て発生する「電子対生成型超新星」 (※1) というタイプの超新星爆発が起こるとされています。超新星爆発では水素やヘリウムよりも重い元素が生成されますが、電子対生成型超新星は他の超新星と比べて特殊な核反応が生じるため、生成される元素の割合に特徴が現れると推定されています。

※1…「対不安定型超新星」とも。極端に重い恒星の内部では、核融合反応で発生する光のエネルギーが高すぎるために、電子と陽電子のペアが生成と消滅を繰り返して温度上昇が暴走する。核反応が極端に進行するため、中心部が収縮してブラックホールを作る暇がないほど急激な爆発が起こると考えられる。これが電子対生成型超新星である。

電子対生成型超新星でばらまかれた残骸は、やがて2世代目の恒星の素となります。「初代星」や「ファーストスター」とも呼ばれる初代の恒星は遥か遠くに存在する上に寿命が短すぎるため、直接観測は困難であると考えられます。その一方で、2世代目の恒星に初代の恒星から引き継がれた特徴的な元素の割合が見つかれば、それは初代の恒星が非常に巨大であったことを示す “指紋” として機能するはずです。

【▲ 図2: SDSS (スローン・デジタル・スカイサーベイ) によって撮影されたLAMOST J101051.9+235850.2の可視光画像。 (Image Credit: SDSS / 国立天文台) 】
【▲ 図2: SDSS (スローン・デジタル・スカイサーベイ) によって撮影されたLAMOST J101051.9+235850.2の可視光画像(Credit: SDSS / 国立天文台)】

中国科学院国家天文台と日本の国立天文台との国際研究チームは、中国の分光探査望遠鏡「LAMOST」を使用して、このような “指紋” を持つ2世代目の恒星を天の川銀河周辺のハローの中で探索しました。

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LAMOSTによる観測の結果、幾つかの興味深い恒星が見つけ出されました。その中の1つ、「LAMOST J101051.9+235850.2」 (地球からの距離約3000光年) というカタログ名の恒星には、マグネシウムの割合が低いという特徴がありました。そこで、研究チームがこの恒星の元素の割合を「すばる望遠鏡」で詳しく調べたところ、LAMOST J101051.9+235850.2はこれまでにない特徴を持つ恒星であることが確認されました。

まず、LAMOST J101051.9+235850.2の重元素 (※2) の割合は、太陽の260分の1以下という極端に少ない量でした。また、重元素の割合が低い他の恒星(低金属星)と比べても、LAMOST J101051.9+235850.2はナトリウムやコバルトが極端に少なく、その他の元素もこれまでに見たことがない割合で含まれていることが判明しました。

※2…ここでいう重元素とは、水素とヘリウム以外の元素を指す。実際の化学的性質に寄らず、これらはまとめて「金属」とも呼ばれる。

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【▲ 図3: 太陽の10倍、85倍、260倍の恒星が超新星爆発をした後の残骸に含まれる元素の推定量。赤い点がLAMOST J101051.9+235850.2で観測された元素の量。最もよく一致しているのは質量が太陽の260倍の恒星の場合である。 (Image Credit: 中国国家天文台) 】
【▲ 図3: 太陽の10倍、85倍、260倍の恒星が超新星爆発をした後の残骸に含まれる元素の推定量。赤い点がLAMOST J101051.9+235850.2で観測された元素の量。最もよく一致しているのは質量が太陽の260倍の恒星の場合である(Credit: 中国国家天文台)】

これらの重元素は、LAMOST J101051.9+235850.2の材料となった物質(ガスや塵)に、重い恒星の超新星爆発で生じた残骸が含まれていることを意味します。そこで、様々な質量の恒星が起こす超新星爆発の後に残される超新星残骸をシミュレーションし、LAMOST J101051.9+235850.2の観測値と一致するものを調べてみたところ、観測結果とよく一致するのは電子対生成型超新星によって生じた超新星残骸に含まれる元素の比率であることが分かりました。特に、クロムからニッケルまでの元素の量の割合には、原子番号が奇数の元素と偶数の元素との間にみられる違い (※3) がよく反映されており、一致度の高さが注目されます。

※3…一般的に、陽子または中性子の数が偶数の原子核は、奇数の原子核と比べて安定性が高く、合成される量が多い。陽子の数は原子番号に対応するため、一般に原子番号が偶数の元素は奇数の元素よりも合成量が多い傾向にある。

以上のことから、LAMOST J101051.9+235850.2の化学組成は過去に電子対生成型超新星が生じたことを示す有力な証拠であり、初期の宇宙に非常に大きな質量を持つ恒星が存在したことを示す証拠でもあると考えられます。

次なる研究課題は、このような巨大な恒星がどの程度存在していたのか、という疑問の解決です。そのためには2世代目の候補となる恒星を多数観測し、LAMOST J101051.9+235850.2のような特徴を持つ恒星を見つけ出して、その割合を算出しなければなりません。新たな疑問に答えるためには、これからも観測作業を続ける必要があります。

 

Source

文/彩恵りり

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