ストックホルム大学の博士研究員Erik Koolさんを筆頭に国立天文台の研究者などが参加した研究チームは、白色矮星が関わる「Ia型超新星」からの電波を初めて検出したとする研究成果を発表しました。今回の成果は、宇宙論の研究でも重要な役割を果たしているIa型超新星のメカニズムを解明するための手がかりにつながると期待されています。

【▲ ヘリウムを主成分とする物質が伴星(右)から流れ出し、白色矮星(左)へ降着する様子の想像図(Credit: Adam Makarenko/W. M. Keck Observatory)】
【▲ ヘリウムを主成分とする物質が伴星(右)から流れ出し、白色矮星(左)へ降着する様子の想像図(Credit: Adam Makarenko/W. M. Keck Observatory)】

白色矮星は、超新星爆発を起こさない比較的軽い恒星(質量は太陽の8倍以下)が赤色巨星の段階を経て進化した姿だとされている天体です。赤色巨星に進化した恒星は周囲の宇宙空間へと外層からガスを放出して質量を失っていき、その後に残るコア(中心核)が白色矮星になると考えられています。

一般的な白色矮星は直径こそ地球と同程度ですが、質量は太陽の4分の3程度もあるとされる高密度な天体です。誕生当初の白色矮星の表面温度は10万℃を上回ることもありますが、内部で核融合反応は起こらず予熱で輝くのみなので、太陽のように単独の恒星から進化した白色矮星は長い時間をかけて冷えていくことになります。

いっぽう、連星をなす恒星の片方が寿命を迎えて白色矮星になると、白色矮星と恒星からなる連星が誕生します。このような連星では冒頭の想像図のように、伴星(恒星)から流れ出たガスが白色矮星に降り積もることがあります。ガスの降着によって増え続けた白色矮星の質量が太陽の約1.4倍(チャンドラセカール限界)に達すると、核融合反応が起こって白色矮星全体が吹き飛ぶと考えられています。これがIa型超新星と呼ばれる現象です。

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Ia型超新星は真の明るさが一定だと考えられています。真の明るさがわかっていれば、観測された見かけの明るさと比較することで地球からの距離を測ることが可能です。このような天体や現象は標準光源と呼ばれています。超新星は明るい現象であり、発生した銀河が遠くても距離を測ることができるので、Ia型超新星は重要な標準光源のひとつとなっています。

ところが、標準光源として重要な役割を果たしているにもかかわらず、Ia型超新星が発生するメカニズムはまだ完全には解明されていません。たとえば、伴星から白色矮星に降着するガスは水素を主成分とすることが多いものの、進化した恒星では水素の外層が失われるため、ヘリウムを主成分とするガスが降着する場合もあると考えられています。また、Ia型超新星は白色矮星と恒星の連星で発生するだけでなく、2つの白色矮星が衝突・合体した結果発生する場合もあると考えられています。宇宙の距離測定の精度を高めるためにも、Ia型超新星のメカニズムをより正確に理解することが重要です。

【▲ Ia型超新星「SN 2020eyj」の発生と星周物質との相互作用を示したアニメーション】
(Credit: Adam Makarenko/W. M. Keck Observatory)

今回、研究チームが2020年3月に発見されたIa型超新星「SN 2020eyj」の観測データを分析したところ、2つの重要な発見がもたらされました。まず、ハワイのW.M.ケック天文台で実施された分光観測(※1)のデータからは、SN 2020eyjが発生した連星の周囲にヘリウムを主成分とする星周物質(星の周辺にある物質)が存在していたことがわかりました。これは伴星から放出された物質の一部であり、白色矮星に降着することなく連星を包むように取り囲んでいたとみられています。

※1…電磁波の波長ごとの強さであるスペクトルを得る観測手法。

また、ジョドレルバンク天文台を中心とするイギリスの超長基線電波干渉計(VLBI※2)「e-MERLIN」によって、SN 2020eyjは電波の波長でも捉えられていたことが判明しました。検出された電波は、超新星爆発にともなう衝撃波と星周物質の相互作用によって放射されたものと考えられています。検出された電波の強さと国立天文台科学研究部の守屋尭さんが構築した理論モデルを比較したところ、この連星では超新星が起こる直前の段階で、1年あたり太陽の1000分の1前後に相当する質量(つまり物質)が伴星から白色矮星に移っていたことが明らかになりました。

※2…複数の電波望遠鏡を連携させて1つの巨大な仮想の電波望遠鏡として機能させる手法。

ストックホルム大学や国立天文台によると、外層が主にヘリウムでできている伴星からのガス降着でIa型超新星が発生したことを示す観測的証拠が得られたことと、長年試みられてきたIa型超新星からの電波の検出は、どちらも今回が初めてだとされています。e-MERLINによると、Ia型超新星の電波放射は白色矮星と恒星からなる連星で発生した場合に予想されるもので、SN 2020eyjが白色矮星どうしの合体によって発生した可能性は事実上除外されるといいます。

研究チームは今後も電波を放射するIa型超新星の捜索に取り組み、白色矮星が爆発に至るメカニズムの解明を目指すということです。

 

Source

文/sorae編集部

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