漆黒の宇宙に溶けていくような渦巻腕 ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した渦巻銀河「JW39」
【▲ ハッブル宇宙望遠鏡で撮影された渦巻銀河「JW39」(Credit: ESA/Hubble & NASA, M. Gullieuszik and the GASP team)】

こちらは「かみのけ座」の方向約9億光年先にある渦巻銀河「JW39」(IC 4141)の姿。JW39は銀河団「A1668」を構成する銀河のひとつです。

【▲ ハッブル宇宙望遠鏡で撮影された渦巻銀河「JW39」(Credit: ESA/Hubble & NASA, M. Gullieuszik and the GASP team)】
【▲ ハッブル宇宙望遠鏡で撮影された渦巻銀河「JW39」(Credit: ESA/Hubble & NASA, M. Gullieuszik and the GASP team)】

塵のリングに囲まれたJW39の明るい中心部は、幅の広い渦巻腕(渦状腕)に囲まれています。高温の青い星々に彩られた渦巻腕からは、まるで漆黒の宇宙に溶け込んでいくかのように右上の方向へと伸びた尾のような構造がうっすらと見えています。

欧州宇宙機関(ESA)によると、JW39の観測は「Jellyfish Galaxy(クラゲ銀河)」と呼ばれる銀河の星形成に関する研究の一環として行われました。クラゲ銀河とはクラゲの“触手”のような筋状の構造を持つ一部の銀河のことで、“触手”は銀河からゆっくりとガスが剥ぎ取られたことで形成されたと考えられています。

銀河の集合体である銀河団では、銀河と銀河の間が銀河団ガスで満たされています。銀河団の中を移動する銀河がこのガスから動圧(ラム圧)を受けて自身のガスを少しずつ剥ぎ取られた結果、移動する銀河の後方に続く“触手”が形成されたのではないかというわけです。JW39の円盤部から伸びた尾のような構造も、そのようなプロセスで形成されたと考えられています。

ESAによれば、クラゲ銀河の“触手”における星形成活動を研究者が分析した結果、“触手”の星形成活動には銀河の円盤部の星形成活動と目立った違いが見られないことがわかったということです。冒頭の画像は「ハッブル」宇宙望遠鏡の「広視野カメラ3(WFC3)」で取得したデータ(近紫外線・可視光線・近赤外線のフィルター合計6種類を使用)をもとに作成されたもので、ESAからハッブル宇宙望遠鏡の今週の一枚として2023年5月22日付で公開されています。

 

Source

  • Image Credit: ESA/Hubble & NASA, M. Gullieuszik and the GASP team
  • ESA/Hubble - A jellyfish galaxy adrift

文/sorae編集部