活動銀河核を持つ棒渦巻銀河「NGC 1808」 ダークエネルギーカメラで撮影

こちらは「はと座」の方向約4000万光年先の棒渦巻銀河「NGC 1808」です。棒渦巻銀河とは中心部分に棒状の構造が存在する渦巻銀河のこと。棒状構造は私たちが住む天の川銀河をはじめ、渦巻銀河の半分程度が持つと考えられています。

【▲ 棒渦巻銀河「NGC 1808」(Credit: Dark Energy Survey/DOE/FNAL/DECam/CTIO/NOIRLab/NSF/AURA; Image processing: R. Colombari and M. Zamani (NSF’s NOIRLab))】
【▲ 棒渦巻銀河「NGC 1808」(Credit: Dark Energy Survey/DOE/FNAL/DECam/CTIO/NOIRLab/NSF/AURA; Image processing: R. Colombari and M. Zamani (NSF’s NOIRLab))】

画像を公開した米国科学財団(NSF)の国立光学・赤外天文学研究所(NOIRLab)によると、NGC 1808の明るい中心部を取り囲む淡い青色をしたリング状の領域には星団や超新星残骸が分布しています。この領域では活発な星形成活動が起きており、高温で明るく輝く青い星が数多く誕生しているとみられています。その外側ではわずかに歪んだ渦巻腕(渦状腕)が内側部分を取り囲むように広がり、柔らかな輝きを放っています。

また、NGC 1808の中心部には狭い領域から強い電磁波を放射する活動銀河核(AGN)があることが知られており、NGC 1808は活動銀河の一種であるセイファート銀河(セイファート2型)に分類されています。こうした活動銀河核の原動力は超大質量ブラックホール(超巨大ブラックホール)だと考えられていて、ブラックホールに引き寄せられたガスが周回しながら落下していく過程でエネルギーが解放され高温になり、そこから様々な波長の電磁波が放射されることで活動銀河核として観測されているとみられています。

NOIRLabによると、NGC 1808の活動銀河核・活発な星形成活動・歪んだ渦巻腕といった特徴は、近くにある別の銀河「NGC 1792」と重力を介して相互作用した過去を物語っている可能性があるようです(NGC 1792は画像右下の視野外にあるため、ここには写っていません)。

冒頭の画像はチリのセロ・トロロ汎米天文台にあるブランコ4m望遠鏡に設置された観測装置「ダークエネルギーカメラ(DECam)」の観測データ(可視光線と赤外線のフィルターを使用)をもとに作成されたもので、NOIRLabから2023年5月17日付で公開されています。ダークエネルギーカメラはその名が示すようにダークエネルギー(暗黒エネルギー)の研究を主な目的として開発された観測装置で、画素数は約520メガピクセル、満月約14個分の広さ(3平方度)を一度に撮影することができます。当初の目的であるダークエネルギー研究のための観測は2013年から2019年にかけて実施されました。

 

Source

  • Image Credit: Dark Energy Survey/DOE/FNAL/DECam/CTIO/NOIRLab/NSF/AURA; Image processing: R. Colombari and M. Zamani (NSF’s NOIRLab)
  • NOIRLab - The Many Layers of NGC 1808

文/sorae編集部