こちらに写っているのは「りゅう座」の一角。画像の横方向の範囲は満月の視直径の12分の1程度に相当します(視野は2.37×1.99分角)。

視野全体を占める天体の多くは銀河です。画像の中央には、ぼんやりと輝く楕円銀河が集まった約90億光年先の銀河団「eMACS J1823.1+7822」が写っています。銀河団の中心付近には後述する「重力レンズ効果」によって引き伸ばされた銀河の像も見えています。

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【▲ ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した銀河団「eMACS J1823.1+7822」(Credit: ESA/Hubble & NASA, H. Ebeling)】
【▲ ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した銀河団「eMACS J1823.1+7822」(Credit: ESA/Hubble & NASA, H. Ebeling)】

銀河団とは、数百~数千の銀河からなる巨大な天体のこと。それ自身が何百億~何千億もの星々の集まりである銀河が何百、何千と集まっているのですから、銀河団は途方もない質量を持つことになります。その質量の大部分は未知の暗黒物質(ダークマター)が占めており、銀河団の研究を通して暗黒物質の分布についての知見を得ることができるといいます。

また、銀河団の膨大な質量は重力レンズ効果をもたらすことがあります。重力レンズとは、手前にある天体(レンズ天体)の質量によって時空間が歪むことで、その向こう側にある天体(光源)から発せられた光の進行方向が変化し、地球からは像が歪んだり拡大して見えたりする現象です。重力レンズは遠方の天体を観測するための“天然の望遠鏡”として利用できますし、その強さを分析することで銀河団における暗黒物質の分布を知ることも可能です。

この画像は「ハッブル」宇宙望遠鏡の「広視野カメラ3(WFC3)」と「掃天観測用高性能カメラ(ACS)」で取得したデータ(可視光線と近赤外線のフィルターを使用)をもとに作成されたもので、ハッブル宇宙望遠鏡の今週の一枚として欧州宇宙機関(ESA)から2023年5月8日付で公開されました。ESAによると、ハッブル宇宙望遠鏡によるeMACS J1823.1+7822の観測は銀河団の暗黒物質の分布に関する知見を得るために計画されたもので、5つの銀河団を対象に行われた観測の一環として実施されたということです。

 

※記事中の距離は天体から発した光が地球で観測されるまでに移動した距離を示す「光路距離」(光行距離)で表記しています。

Source

  • Image Credit: ESA/Hubble & NASA, H. Ebeling
  • ESA/Hubble – Cosmic leviathan

文/sorae編集部

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