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国立天文台ハワイ観測所のThayne Currie(セイン・キュリー)さんを筆頭とする研究チームは、同観測所の「すばる望遠鏡」を使用して、約130光年先の太陽系外惑星を直接撮像で発見したとする研究成果を発表しました。

「HIP 99770 b」と呼ばれるこの系外惑星は、「はくちょう座」の方向にある恒星「HIP 99770」から約17天文単位(※1)離れた軌道を公転しており、推定質量は木星の約15倍と算出されました。主星のHIP 99770は質量が太陽の約1.8倍のA型星で、表面温度は8000ケルビン(約7727℃)、地球からの見かけの明るさは肉眼でも見える4等級とされています。

※1…1天文単位(au)=約1億5000万km、太陽から地球までの平均距離に由来。17天文単位は太陽から木星までの距離(約5.2天文単位)の3倍程度に相当する。

【▲ すばる望遠鏡が捉えた「HIP 99770」惑星系の画像(★の位置にある主星からの光はコロナグラフで遮られている)。白い矢印の先が今回発見された系外惑星「HIP 99770 b」、黄色い点線の円は木星の公転軌道の大きさを示す(Credit: T. Currie/Subaru Telescope, UTSA)】
【▲ すばる望遠鏡が捉えた「HIP 99770」惑星系の画像(★の位置にある主星からの光はコロナグラフで遮られている)。白い矢印の先が今回発見された系外惑星「HIP 99770 b」、黄色い点線の円は木星の公転軌道の大きさを示す(Credit: T. Currie/Subaru Telescope, UTSA)】

惑星は明るく輝く恒星の近くに存在する暗い天体であるため、遠く離れた恒星を公転する系外惑星の姿を直接捉えることは困難です。アメリカ航空宇宙局(NASA)の系外惑星データベースによると、既知の系外惑星の数は2023年4月10日時点で5332個に達していますが、その多くは主星の明るさの変化やふらつきの検出を利用して間接的に発見されてきました。国立天文台によると、惑星と呼べるほど質量が小さく、なおかつ恒星の近くにある天体で直接撮像されたものは、これまでに20例ほどしかないといいます。

また、系外惑星を直接撮像で発見するためには、惑星が公転していそうな恒星を1つ1つ観測する必要があります。近年では地球の大気によるゆらぎの影響を打ち消す「補償光学(Adaptive Optics:AO)」技術を利用して、恒星と惑星を分離して捉えることができる高解像度の観測装置も登場しています。しかし、惑星が公転していそうな恒星の候補をうまく絞り込むことができなければ、大量の候補を端から観測し続けなければなりません。

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そこで注目されているが、欧州宇宙機関(ESA)の「ガイア」宇宙望遠鏡や、その前進となった「ヒッパルコス」観測衛星などで得られた観測データです。ガイア宇宙望遠鏡やヒッパルコス衛星は天体の位置や運動について調べるアストロメトリ(位置天文学)に特化しています。2022年6月に公開されたガイア宇宙望遠鏡の最新の観測データ「DR3(Data Release 3)」には、約18億個の恒星の位置や明るさをはじめ、約15億個の恒星の年周視差と固有運動(星までの距離や天球上における星の見かけの動き)といった情報が含まれています。

関連:18億以上の天体を観測。欧州の宇宙望遠鏡「ガイア」最新のデータが公開された(2022年6月14日)

研究チームは惑星の存在を間接的に示す位置のふらつきがみられる恒星をアストロメトリのデータから拾い出し、すばる望遠鏡の観測装置「SCExAO」および「CHARIS」(※2)による観測を行いました。その結果発見されたのが、今回報告されたHIP 99770 bというわけです。通常の直接撮像では明るさをもとに質量を推定するので誤差が大きくなるものの、今回は恒星のふらつきのデータも利用できたことから木星1個分程度の誤差で算出することができたといいます。

※2…SCExAO:スケックスエーオー、大気のゆらぎによる影響を打ち消す補償光学を利用して得られた像をさらに改善し、惑星からの光を保ちつつ親星からの光だけを遮ることができるコロナグラフ超補償光学系。CHARIS:カリス、惑星の詳しい情報(大気の温度・圧力・化学組成など)を得ることができる近赤外線撮像分光器。

【▲ 2020年7月から2021年10月にかけてすばる望遠鏡で撮像された系外惑星「HIP 99770 b」(Credit: T. Currie/Subaru Telescope, UTSA)】
【▲ 2020年7月から2021年10月にかけてすばる望遠鏡で撮像された系外惑星「HIP 99770 b」(Credit: T. Currie/Subaru Telescope, UTSA)】

国立天文台によると、アストロメトリと連携した直接撮像で発見された系外惑星は、HIP 99770 bが初めてだといいます。研究に参加した東京大学アストロバイオロジーセンターの田村元秀教授は「本研究の手法で、新たな系外惑星の発見が続くでしょう。次世代の望遠鏡と補償光学を用いた将来の観測では、この手法で「第二の地球」が観測されることも夢ではありません」とコメントしています。

なお、木星の約15倍というHIP 99770 bの質量は、褐色矮星(恒星と惑星の中間にあたる天体)と惑星の境界付近にあたります。国立天文台やアストロバイオロジーセンターもプレスリリースにて「通常、惑星の質量は約 13 木星質量以下とされています」と言及した上で、「この恒星(※HIP 99770)は太陽よりかなり重いため、恒星の星周円盤から 15 木星質量の惑星が誕生することは不思議ではありません」「この天体は恒星になれなかった星、褐色矮星、ではなく、確実な惑星と考えられます」と述べています。

 

Source

文/sorae編集部

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