アメリカ航空宇宙局(NASA)は2023年3月6日、火星探査車「Curiosity(キュリオシティ)」が撮影した火星の空のパノラマ画像2点を公開しました。こちらの画像はそのうちの1つで、キュリオシティのマストに搭載されている「Mastcam」を使って2023年2月2日(ミッション3730ソル目※)に撮影された日没後の空の画像28枚を組み合わせて作成されています。
※…1ソル(Sol)=火星での1太陽日、約24時間40分。
キュリオシティを運用するNASAのジェット推進研究所(JPL)によると、地平線の彼方から雲を照らしている光は地球でもおなじみの薄明光線(光芒)です。薄明光線は雲の切れ間から漏れた太陽光線が放射状に広がって見える現象で、JPLによれば火星でこれほどはっきりとした薄明光線が捉えられたことは今までなかったといいます。
もう1つはこちらの画像で、2023年1月27日(ミッション3724ソル目)にMastcamで撮影された画像28枚を組み合わせて作成されました。虹色に輝く羽毛に似た形の雲が日没後の空に浮かぶ幻想的な景色が捉えられています。
JPLによると、これらの画像は2021年に始まった火星の夜光雲(日の出前や日没後の暗い空を背景に輝いて見える雲)の研究の一環として撮影されました。火星の雲の多くは高度60km以下に浮かんでいるものの、今回撮影された雲はそれよりも高いところにあるように見えるといいます。水の氷の粒で構成されている一般的な雲よりも高度が高いことから、これらの雲は二酸化炭素の氷(ドライアイス)の粒で構成されている可能性が示唆されるようです。
また、宇宙科学研究所(Space Science Institute:SSI、米国コロラド州ボルダー)の大気科学者Mark Lemmonさんによれば、雲の虹色は隣り合う粒子の大きさが揃っていることを意味していて、色の移り変わりからは粒子の大きさの変化がわかるといいます。Mastcamで撮影された夜光雲のカラー画像は、雲を構成する粒子(雲粒)の大きさが時間とともに変化する様子を研究する上で役立つということです。
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Source
- Image Credit: NASA/JPL-Caltech/MSSS/SSI
- NASA/JPL - NASA’s Curiosity Views First ‘Sun Rays’ on Mars
文/sorae編集部
最終更新日:2024/03/13