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【▲アルマ望遠鏡は、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が特定した遠方の銀河「GHZ2/GLASS-z12」の正確な年齢の測定に成功(Credit: NASA / ESA / CSA / T. Treu, UCLA / NAOJ / T. Bakx, Nagoya U.)】

名古屋大学と国立天文台の研究者が率いるチームは、チリの電波望遠鏡「アルマ望遠鏡(ALMA)」を用いて宇宙年齢の97%に相当する時間を旅してきた電波を検出することにより、きわめて遠方にある銀河の年齢を酸素の輝線スペクトルで測定することに成功したとする研究成果を発表しました。

この銀河は、遠方宇宙と巨大銀河団の背後を「ジェイムズ・ウェッブ」宇宙望遠鏡で観測する「GLASS-JWST」(※)プログラムで初めて特定されたもので、「GLASS-z12(GHZ2)」と名付けられています。今回の成果は、ウェッブ宇宙望遠鏡が観測した宇宙初期の銀河の存在を裏付けるものとなりました。

(※)「GLASS :Grim Lens-Amplified Survey form Space(重力レンズ効果を用いた宇宙探査)」「JWST:James Webb Space Telescope(ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡)」

遠方の銀河を発した光(電磁波)は、私たちに届くまで非常に長い時間をかけて宇宙空間を進むため、宇宙の膨張にともなって波長が長くなります。可視光線では青色から赤色の側に向かってシフトすることになるため、この現象は「赤方偏移」(宇宙論的赤方偏移)と呼ばれています。GLASS-z12の赤方偏移による「赤い」色は、研究者が観測した遠方銀河の候補の中で、最も確実で説得力のある証拠の一つに挙げられていました。

ウェッブ宇宙望遠鏡は最初の数週間の観測で、非常に多くの明るい遠方銀河の候補を特定しました。しかし、これらの銀河の赤い色は「遠方にある」ことしか示しておらず、また、非常に多くの塵を含むために赤く見える銀河が遠くにある天体のように見えているのではないかという可能性も指摘されていました。発見された銀河までの本当の距離を確認するには、銀河のスペクトル(電磁波の波長ごとの強さ)を直接観測して、スペクトルに刻まれた元素の痕跡(輝線や吸収線)をもとに赤方偏移を測定する必要があります。

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その探査に用いられたのが酸素の輝線スペクトルです。酸素は宇宙誕生から比較的短期間で形成された元素のひとつであり、遠方銀河にも豊富に存在すると考えられていることから、研究チームは検出の可能性を高めるために酸素輝線を選択しました。

研究チームがアルマ望遠鏡をGLASS-z12に向けて、ウェッブ宇宙望遠鏡の観測で示唆された波長で酸素輝線を探索した結果、この銀河の近傍で輝線の検出に成功しました。観測された輝線の赤方偏移はz=約12.117であり、このことからウェッブ宇宙望遠鏡が観測したGLASS-z12はビッグバンからわずか3億6700万年後の銀河の姿であることがわかったといいます。

【▲遠方銀河「GHZ2/GLASS-z12」の画像とアルマ望遠鏡の分光観測による酸素の輝線スペクトル。上端の尺度はビッグバンからの宇宙年齢(百万年)(Credit: NASA / ESA / CSA / T. Treu, UCLA / NAOJ / T. Bakx, Nagoya U.)】

論文の筆頭著者である名古屋大学のトム・バックス(Tom Bakx)氏は「ウェッブ宇宙望遠鏡による最初の画像は非常に多くの初期銀河の存在を明らかにしたので、地球上にある最高の天文台からの観測でその結果を検証しなければならないと思っていました」と語っています。

ところが、観測された酸素輝線とウェッブ宇宙望遠鏡が観測した銀河の位置との間には、わずかな違いがあったといいます。しかしバックス氏は、アルマ望遠鏡で検出された酸素輝線が銀河によるものではないと解釈するのは困難だと指摘します。共著者である国立天文台のジョージ・ザバラ(Jorge Zavala)氏は、位置の違いが生じた原因について、宇宙初期の銀河における激しい爆発によって周囲にガスが吹き飛ばされたからではないかと付け加えています。

また、ザバラ氏は「アルマ望遠鏡による遠方銀河の分光観測は、ビッグバンから数億年以内に銀河が存在していたことを示す確かな証拠であり、ウェッブ宇宙望遠鏡による観測結果を裏付けるものです」「アルマとウェッブが力を合わせれば宇宙の黎明期の解明に近づけると確信しています」と結んでいます。

本研究成果は2022年12月23日付で「王立天文学会月報(Monthly Notices of the Royal Astronomical Society)」に掲載されました。

 

Source

文/吉田哲郎

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