こちらは南天の「ほ座」の方向を捉えた画像です。縦横ともに約4度(満月の視直径の約8倍)の視野全体が無数の星や暗黒星雲で埋め尽くされていますが、実はこの画像、今回公開されたデータのほんの一部分でしかありません。
米国科学財団(NSF)の国立光学・赤外天文学研究所(NOIRLab)は、チリのセロ・トロロ汎米天文台にあるブランコ4m望遠鏡の観測装置「ダークエネルギーカメラ(DECam)」を使って実施された「ダークエネルギーカメラ銀河面サーベイ(DECaPS:Dark Energy Camera Plane Survey)」の2番目のデータセット「DECaPS2」を公開しました。
天の川銀河には何千億個もの星やさまざまな星雲などの天体が存在しています。DECaPSでは天の川銀河の銀河面(すなわち天の川)に沿って分布するこれらの天体をカタログ化するための可視光線と近赤外線による観測が行われており、2017年には最初のデータセット「DECaPS」が公開されました。
今回公開されたDECaPS2では、先に公開されたDECaPSにさらなるデータが追加されています。観測された範囲は「いて座」から「とも座」にかけての130度×20度、満月で表現すれば約1万3000個分の広さに及び、約33億2000万もの天体が含まれているといいます。
NOIRLabによると、DECaPS2では2万1400回の露光で10テラバイト以上のデータが生成され、データセットの完成までに2年が費やされたといいます。DECaPS2に関する論文をまとめた研究チームの筆頭であるハーバード大学の大学院生Andrew Saydjariさんは、観測された天体の数という点では単一のカメラで作成されたカタログとして過去最大だと語っています。
また、研究チームの一員である宇宙望遠鏡科学研究所(STScI)の研究員Edward Schlaflyさんは、別のサーベイで得られたデータ(Pan-STARRS1)とDECaPS2を組み合わせれば銀河面の360度パノラマが完成し、天の川銀河の星や塵の3次元構造をこれまでになく詳細にマッピングできるとコメントしています。
なお、ダークエネルギーカメラ(DECam)はその名が示すようにダークエネルギー(暗黒エネルギー)の研究を主な目的として開発された観測装置で、画素数は約520メガピクセル、満月約14個分の広さ(3平方度)を一度に撮影できます。本来の目的であるダークエネルギー研究のための観測は2013年から2019年にかけて実施されました。本稿に掲載した画像はNOIRLabから2023年1月18日付で公開されています。
Source
- Image Credit: DECaPS2/DOE/FNAL/DECam/CTIO/NOIRLab/NSF/AURA; Image Processing: M. Zamani & D. de Martin (NSF’s NOIRLab)
- NOIRLab - Billions of Celestial Objects Revealed in Gargantuan Survey of the Milky Way
文/sorae編集部