左上隅で明るく輝いている星の集団が大マゼラン雲にある球状星団「NGC 2031」
【▲左上隅で明るく輝いている星の集団が大マゼラン雲にある球状星団「NGC 2031」(Credit:NASA, ESA, and L. Bianchi (The Johns Hopkins University); Processing: Gladys Kober (NASA/Catholic University of America))】

こちらの画像の左上隅で明るく輝いている星の集団は、ハッブル宇宙望遠鏡が捉えた大マゼラン雲球状星団「NGC 2031です。幾千個もの星が密集しているこの星団は、星々の互いの重力によって球状にまとまっています。

NGC 2031では少なくとも14個の「セファイド(ケフェイド)変光星」が見つかっています。セファイドは明るさが周期的に変化する変光星の一種で、周期が長いものほど本来の明るさが明るい「周期-光度関係」が知られています。星の見かけの明るさは距離の二乗に反比例するので、周期-光度関係と実際の観測結果を組み合わせることで、地球からセファイド変光星までの距離を測定することができるのです。その測定結果をもとに、NGC 2031までの距離は約15万光年と推定されており、NASAの科学者によれば年齢は推定14000万歳で、質量は太陽の3000倍以上だといいます。

NGC 2031は、大マゼラン雲の中でも特に星が密集している領域に存在しています。そのため、近傍の星の大気や表面の性質が、研究対象の天体の測定に影響を与える「星による汚染(stellar contamination)」という現象が起きています。

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星による汚染は、球状星団の中心部に明るく青い星が観測されたことを説明できる理論の一つです。このような星は一般的に高温で燃え、寿命が短いのですが、球状星団は年老いた星の住み処であることが知られています。

NGC 2031のような古い球状星団で観測された明るい青い星は、実際は「青色はぐれ星(blue straggler)」と呼ばれる、近隣の星よりも後に形成されるタイプの星であるという説もあります。この説は、ハッブル宇宙望遠鏡が別の球状星団きょしちょう座4747 Tucanae)」を画像化した際に展開されました。

STScI-01EVVK4P3NF6J0JJZX4N8BTJMY(Credit:R. Saffer (Villanova University), D. Zurek (STScI) and NASA)
【▲左:地上の望遠鏡が撮影した球状星団「きょしちょう座47(47 Tucanae)」、右:ハッブル宇宙望遠鏡の広域惑星カメラ2による、その中心部の密集した部分を個々の星に分離した画像で、画像中の黄色の円はいくつかの「青色はぐれ星」を強調しています(Credit: R. Saffer (Villanova University), D. Zurek (STScI) and NASA)】

青色はぐれ星は、2つの年老いた赤い星が合体して形成されたと考えられています。その結果、質量が大きくなって、青い色をした高温の星になるということです。

ただし、合体説にも2つのシナリオが考えられています。1つは重力で結合した連星系の星が合体したとする説。もう1つは、無関係の2つ星が密集した星団の中心部で偶然に衝突したとする説です。

年老いた星の集団である球状星団に、青く輝き若く見える星が現れるため、青色はぐれ星の発見を「星の老人ホームでたむろしている10代の若者を見つけるようなもの」と表現する天文学者もいるようです。

 

Source

  • Image Credit: NASA, ESA, and L. Bianchi (The Johns Hopkins University); Processing: Gladys Kober (NASA/Catholic University of America)、R. Saffer (Villanova University), D. Zurek (STScI) and NASA
  • NASA - Hubble Beholds Brilliant Blue Star Cluster
  • HUBBLE SITE - HUBBLE CATCHES UP WITH A BLUE STRAGGLER STAR

文/吉田哲郎

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