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【▲ 白色矮星「WD J2147-4035」と「WD J1922+0233」、その周囲を公転する惑星の残骸を描いたイメージ図。WD J2147-4035は暗く赤い色、WD J1922+0233は青い色をしているとされる(Credit: University of Warwick/Dr Mark Garlick)】
【▲ 白色矮星「WD J2147-4035」と「WD J1922+0233」、その周囲を公転する惑星の残骸を描いたイメージ図。WD J2147-4035は暗く赤い色、WD J1922+0233は青い色をしているとされる(Credit: University of Warwick/Dr Mark Garlick)】

ウォーリック大学の博士課程学生Abbigail Elmsさんを筆頭とする研究チームは、南天「つる座」の方向約91光年先にある「WD J2147-4035」を含む、低温の白色矮星に関する研究成果を発表しました。

研究チームによると、WD J2147-4035の大気からは落下した惑星の残骸に由来するとみられる元素が検出されていて、100億年以上前に形成された惑星系の証拠だと考えられています。

■白色矮星から惑星由来とみられる元素を検出 惑星系は100億年以上前に形成か

白色矮星は、太陽のように比較的軽い恒星(質量は太陽の8倍以下)が赤色巨星の段階を経て進化した天体です。赤色巨星は外層から周囲の宇宙空間にガスを放出し、その後に残ったコア(核)が白色矮星になると考えられています。一般的な白色矮星は直径が地球と同じくらいですが、質量は太陽の4分の3程度もあるとされている高密度な天体です。

【▲ 白色矮星「シリウスB」(左)と地球(右)を比べたイメージ図(Credit: ESA/NASA)】
【▲ 白色矮星「シリウスB」(左)と地球(右)を比べたイメージ図(Credit: ESA/NASA)】

今回、研究チームが前述のWD J2147-4035と、「わし座」の方向約129光年先にある白色矮星「WD J1922+0233」のスペクトル(電磁波の波長ごとの強さ)を分析したところ、ナトリウムとカリウムが両方から検出されたことに加えて、WD J2147-4035からはリチウムが、WD J1922+0233からはカルシウムが検出されました。WD J2147-4035からは暫定的に炭素も検出されています。

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これらの元素は、一般的に水素やヘリウムで構成されている白色矮星表層の大気に含まれているものです。白色矮星の大気に含まれるヘリウムよりも重い元素は白色矮星の内部へ沈降していくと考えられていますが、今回のように大気から重元素が検出されることもあります。こうした重元素は、白色矮星に比較的最近落下した惑星の残骸などの天体による汚染だとみられています。

惑星系の主星である恒星が白色矮星へと進化すると、その過程で惑星系に混乱がもたらされ、場合によっては惑星が破壊されるとみられています。破壊された惑星の残骸は白色矮星を周回し、その一部はやがて白色矮星に落下します。研究チームによると、WD J1922+0233に落下したのは地球の大陸地殻に似た化学組成を持つ残骸だった可能性があるようです。

【▲ 白色矮星「G238-44」の想像図(Credit: NASA, ESA, Joseph Olmsted (STScI))】
【▲ 白色矮星「G238-44」の想像図(Credit: NASA, ESA, Joseph Olmsted (STScI))】

関連:恒星の死がもたらす惑星系規模の混乱を白色矮星の観測データから推定

また、研究チームによると2つの白色矮星は表面温度が低く、WD J2147-4035は約3050ケルビン(摂氏約2777度)、WD J1922+0233は約3340ケルビン(摂氏約3067度)とされています。ほぼヘリウムでできた大気を持つWD J2147-4035は暗く赤い色をしていますが、水素とヘリウムが混合した大気を持つWD J1922+0233は表面温度が低いにもかかわらず青い色をしているといいます。

誕生当初の白色矮星は摂氏10万度近い高温で輝くものの、恒星だった頃の予熱で輝いているため、長い時間をかけて冷えていきます。観測された表面温度をもとに白色矮星の年齢を求めた研究チームは、WD J2147-4035が恒星として誕生したのは今から約107億年前で、白色矮星になって冷却が始まったのは約102億年前であることを発見しました。もう1つのWD J1922+0233は少し若く、冷却が始まってから約90億年が経っているとみられています。

以上の結果をもとに研究チームは、WD J2147-4035を主星とする惑星系が形成されたのは100億年以上前のことであり、これまでに天の川銀河の白色矮星において発見されたものとしては最も古い時代に形成された惑星系であると結論付けました。

研究を率いたElmsさんは「地球のような惑星によって一度汚染されたものとしては天の川銀河で最も古い恒星の残骸を私たちは発見しました。100億年スケールの出来事であることや、これらの惑星が地球の形成よりもずっと前に死を迎えたことに驚かされます」と語っています。

今回の成果は、惑星の形成に関して新たな知見がもたらされるきっかけになるかもしれません。というのも、惑星の材料となる重元素は恒星内部の核融合反応によって生成されたり、超新星爆発や中性子星どうしの合体といった激しい現象にともなって生成され続けてきたとされているからです。約46億年前の太陽系形成時と比べて、これら2つの白色矮星が恒星として形成された時代は重元素の存在量が少なく、当時の惑星は太陽系とは異なる条件下で形成されたことが考えられます。

Elmsさんは、恒星全体のうち97パーセントがたどり着く白色矮星を理解することはとても重要であり、特に今回の研究対象となった非常に低温の白色矮星からは、天の川銀河で最も古い星々の周囲における惑星系の形成と進化に関する情報が得られるとコメントしています。

 

Source

  • Image Credit: University of Warwick/Dr Mark Garlick
  • ウォーリック大学 - Oldest planetary debris in our galaxy found from new study
  • Elms et al. - Spectral analysis of ultra-cool white dwarfs polluted by planetary debris (MNRAS / arXiv)

文/松村武宏

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