赤い閃光の正体は? NASAが設立した市民科学プロジェクトが謎多き現象の解明に乗り出す
【▲2021年12月4日にギリシャ・アテネ郊外で撮影されたスプライト(Credit: Thanasis Papathanasiou)】
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【▲スプライトの情報を収集する市民科学プロジェクト「Spritacular.org」のトップページ(Credit: Spritacular.org)】

新星・超新星や彗星といった突発的に出現する天体や現象の捜索・発見ではプロだけでなくアマチュア天文家も活躍しており、論文誌に掲載されたりニュースで取り上げられたりしています。こうした一般市民による科学活動は市民科学(シチズンサイエンス)と呼ばれ、天文学を含めた科学の発展に貢献することがあります。

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このような市民科学のプロジェクトを、アメリカ航空宇宙局(NASA)が新たに立ち上げました。プロジェクトの名は「スプライタキュラ(Spritacular)」です。スプライタキュラとは、「閃光」を意味する「Sprite」と、「~っぽい」を意味する「-tacular」を組み合わせて作られた造語。同プロジェクトは、落雷の際に高度約80km(約50マイル)で発生する「スプライト(レッドスプライト)」と呼ばれる「超高層雷放電(Transient Luminous Event: TLE)」の観測データを集めることが目的だといいます。

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過去20年間で、高品質なカメラの価格はますます手頃になり、大気中で発生する迫力のある現象を記録するツールが、より多くの一般人にとって身近なものになったといいます。こうした背景をもとに、すでにスプライトを積極的に追い求めているコミュニティだけでなく、これから同現象についてより多くのことを学びたいと考えている人や、大気中や宇宙空間における電気現象の研究者といった人々の架け橋になるべく、同プロジェクトが設立された模様です。

テレビカメラのテスト中に偶然撮影された「スプライト」

スプライトは、落雷後に発生する赤色の閃光として発生する発光現象です。さまざまな形状を取るために、「散乱した羽毛」「らせん状の巻きひげ」などと形容されるようです。同現象の最初の報告は19世紀後半まで遡り、1989年には米国ミネソタ大学の研究者が低光量テレビカメラのテスト中に偶然スプライトを撮影しました。それ以来研究が進められていますが、スプライトの発生頻度や発生条件、どうしてさまざまな形状をとりうるのかなど、多くの疑問が解決していない状況にあるといいます。

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【▲2021年12月4日にギリシャ・アテネ郊外で撮影されたスプライト(Credit: Thanasis Papathanasiou)】

スプライタキュラ・プロジェクトの当面の目的は、撮影されたスプライトのデータベースを作成することです。もし、あなたがスプライトを撮影し、研究に協力したいと考えているのであれば、スプライタキュラのプロジェクトページでアカウントを作成して、撮影した写真を提出しましょう。写真は科学者によるレビューや提出者との協議を経た後に、提出者を共同著者として論文に掲載されるとのことです。

 

Source

文/Misato Kadono