クレアモント氏によって作成されたキャッツアイ星雲の 3 次元モデルと、ハッブル宇宙望遠鏡によって撮影されたキャッツアイ星雲の比較

【▲クレアモント氏によって作成されたキャッツアイ星雲の 3 次元モデル(左)と、ハッブル宇宙望遠鏡によって撮影されたキャッツアイ星雲(右)の比較(Credit: Ryan Clairmont (left), NASA, ESA, HEIC, and The Hubble Heritage Team (STScI/AURA) (right))】

キャッツアイ星雲(NGC 6543は、りゅう座の方角3000光年を超える距離にある惑星状星雲で、非常に複雑な構造をした星雲として知られています。惑星状星雲は、赤色巨星となった星が進化の最終段階で外層から周囲へガスを放出し、そのガスが中心星から放出される紫外線によって照らされ、色鮮やかに輝いて見えている天体です。

キャッツアイ星雲は、ハッブル宇宙望遠鏡でも高解像度で撮影され、結び目や球状の殻、弧状のフィラメントなどの複雑な構造が明らかにされています。しかし、この星雲の不思議な構造は、これまで受け入れられてきた惑星状星雲の形成理論では説明できず、天体物理学者を困惑させていました。より最近の研究では、このような複雑な惑星状星雲の形成メカニズムとして「歳差運動ジェット」が提示されましたが、詳細なモデルはありませんでした。

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このたび、キャッツアイ星雲のコンピュータによる3次元モデルが初めて作成され、星雲の外殻を取り囲む一対の対称的なリングが明らかになりました。このリングの対称性は、歳差運動ジェットによって形成されたことを示唆しており、星雲の中心に連星が存在する有力な証拠になるとのことです。

この研究を主導したのは、アメリカの高校を卒業したばかりのライアン・クレアモント(Ryan Clairmont)氏で、研究成果は2022915日付けの「Monthly Notices of the Royal Astronomical Society」誌に掲載されました。なお、クレアモント氏は研究当時高校在学中で、現在はスタンフォード大学に進学予定とのこと。

クレアモント氏は研究に際して、特に惑星状星雲に適した3次元天体物理学モデリングソフトウェアSHAPEの開発者であるメキシコ国立自治大学のウォルフガング・ステフェン(Wolfgang Steffen)博士とカルガリー大学のニコ・コーニング(Nico Koning)博士に協力を求めました。

3名の研究者たちは、メキシコのサン・ペドロ・マルティール国立天文台で得られたスペクトルデータハッブル宇宙望遠鏡による画像から新しい3次元モデルを構築し、キャッツアイ星雲の外殻に高密度のガスのリングが巻き付いていることを明らかにしました。リングは互いにほぼ完全に対称的であり、これは、星雲の中心星から反対方向に放出された高密度ガスの流れであるジェットによって形成されたことを示唆しています。

ジェットは、コマを回したとき軸が揺れ動くような歳差運動をしており、その回転によってキャッツアイ星雲の周囲にリングができるのです。しかし、このリングは部分的なものでジェットが360度完全に回転したわけではなく、ジェットの出現は短時間の現象であったことがわかりました。また、惑星状星雲の中で歳差運動ジェットを駆動できるのは連星だけということであり、これがキャッツアイ星雲の中心に連星が存在する証拠になるというのです。

クレアモント氏は、本研究により中高生を対象とした世界最大の科学コンテストである国際科学技術フェア(ISEFInternational Science and Engineering Fairの物理学・天文学部門で1位を獲得しています。

1220_xray_opt_side(Credit:Left: X-ray (NASA/UIUC/Y.Chu et al.), Right: X-ray/Optical Composite (X-ray: NASA/UIUC/Y.Chu et al., Optical: NASA/HST))

【▲キャッツアイ星雲の、チャンドラX線観測衛星によるX線画像(左)と、それにハッブル宇宙望遠鏡による可視光線画像を加えた合成画像(右)(Credit:Left: X-ray (NASA/UIUC/Y.Chu et al.), Right: X-ray/Optical Composite (X-ray: NASA/UIUC/Y.Chu et al., Optical: NASA/HST))】

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※本記事は2022年9月19日付けでRoyal Astronomical Society(王立天文学会)に掲載された内容を元にしています。

Source

  • Image Credit: Ryan Clairmont, NASA, ESA, HEIC, and The Hubble Heritage Team (STScI/AURA)、X-ray (NASA/UIUC/Y.Chu et al.), X-ray/Optical Composite (X-ray: NASA/UIUC/Y.Chu et al., Optical: NASA/HST)
  • Royal Astronomical Society - Cat’s Eye Nebula seen in 3D
  • Monthly Notices of the Royal Astronomical Society - Morphokinematic modelling of the point-symmetric Cat’s Eye, NGC 6543: Ring-like remnants of a precessing jet

文/吉田哲郎

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