グランドデザイン渦巻銀河「M99」に広がる冷たいガス雲の分布 アルマ望遠鏡が観測
【▲ 渦巻銀河「M99(NGC 4254)」。超大型望遠鏡(VLT)とアルマ望遠鏡(ALMA)で取得された画像を合成したもの(Credit: ESO/PHANGS)】

こちらは「かみのけ座」の方向約4900万光年先にある渦巻銀河「NGC 4254」です。18世紀にフランスの天文学者シャルル・メシエがまとめた「メシエカタログ」には「M99(Messier 99)」として登録されています。

【▲ 渦巻銀河「M99(NGC 4254)」。超大型望遠鏡(VLT)とアルマ望遠鏡(ALMA)で取得された画像を合成したもの(Credit: ESO/PHANGS)】

M99は明瞭な渦巻腕(渦状腕)を持つことから、はっきりと目立つ渦巻腕がある「グランドデザイン渦巻銀河」(grand design spiral galaxy)にも分類されています。ただしこの画像では銀河の中央付近をクローズアップしているため、渦巻腕は途中までしか写っていません。

画像のM99は、それぞれ青と赤で彩られた2つの渦巻構造が重なったような姿をしています。画像を公開したヨーロッパ南天天文台(ESO)によると、青や紫はESOの超大型望遠鏡(VLT)に設置されている広視野面分光観測装置「MUSE」で取得された星の分布を、赤やオレンジはチリの電波望遠鏡群「アルマ望遠鏡(ALMA)」で取得された冷たいガス雲の分布に対応しています。冷たいガス雲はやがて崩壊して、新たな星を形成することがあります。2つの観測データを比較することで、星がどのようにして形成されるのかをより良く理解できるのだといいます。

この画像は、近傍宇宙の銀河を対象とした観測プロジェクト「PHANGS」(Physics at High Angular resolution in Nearby GalaxieS)の一環として取得されました。PHANGSプロジェクトにはMUSEを備えた超大型望遠鏡やアルマ望遠鏡に加えて、アメリカ航空宇宙局(NASA)と欧州宇宙機関(ESA)の「ハッブル」宇宙望遠鏡も参加。銀河における星形成を理解するために、様々な波長の電磁波を使った高解像度の観測が5年以上の歳月をかけて行われました。冒頭の画像はESOの今週の一枚として、2022年10月24日付で公開されています。

【▲ ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した渦巻銀河「M99(NGC 4254)」(Credit: ESA/Hubble & NASA, M. Kasliwal, J. Lee and the PHANGS-HST Team)】
【▲ ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した渦巻銀河「M99(NGC 4254)」(Credit: ESA/Hubble & NASA, M. Kasliwal, J. Lee and the PHANGS-HST Team)】

 

関連:グランドデザイン渦巻銀河「M99」ハッブル宇宙望遠鏡が撮影

Source

  • Image Credit: ESO/PHANGS
  • ESO - Pinwheel firework

文/松村武宏