東京大学大学院理学系研究科博士課程3年の木村真博さんと、国立天文台科学研究部の生駒大洋教授は、赤色矮星を公転する岩石惑星に存在する水の量を推定したところ、多すぎず少なすぎない適度な量の水を持つ確率が従来の予想よりもずっと高い可能性が示されたとする研究成果を発表しました。国立天文台によると、地球のように海があって気候も温暖な“海惑星”の発見が、これまで以上に期待できるといいます。

■赤色矮星のハビタブルゾーンにある地球サイズの系外惑星、数パーセントは海水量も地球程度の可能性

人類はこの四半世紀で5000個以上の太陽系外惑星を発見してきました。その種類はさまざまで、ホットジュピター(恒星のすぐ近くを公転する高温の巨大ガス惑星)のように極端な環境の系外惑星もあれば、主星のハビタブルゾーン(惑星の表面に液体の水が保持され得る領域)を公転する岩石惑星とみられる系外惑星もあります。

特に、太陽よりも小さくて軽い赤色矮星(M型星)では、「トラピスト1(TRAPPIST-1)」のように複数の岩石惑星が見つかっている例もあります。赤色矮星は天の川銀河の恒星のうち約4分の3を占めるほど数が多く、寿命は1000億年程度(太陽の10倍くらい)とされています。

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【▲ 赤色矮星のハビタブルゾーンを公転する地球に似た系外惑星の想像図(Credit: NASA Ames/JPL-Caltech/T. Pyle)】
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【▲ 赤色矮星のハビタブルゾーンを公転する地球に似た系外惑星の想像図(Credit: NASA Ames/JPL-Caltech/T. Pyle)】

ハビタブルゾーンを公転する岩石惑星では、生命の居住可能性(生命が誕生し、生息し続けられる可能性)が注目されます。生命を持つ惑星に必要な条件はまだ十分に理解されていないものの、少なくとも地球に生息する生命の多くは、液体の水と温暖な気候を必要としています。

国立天文台によれば、液体の水……すなわち海と温暖な気候との間には密接な関係があります。ハビタブルゾーンを公転する惑星で温暖な気候が維持されるには、適度な量の水が必要です。水が少なすぎる環境が生命にとって厳しいことはわかりますが、水が多ければ居住可能性も高まる、というわけではないようです。海水量が地球の数十倍以上にもなる岩石惑星では気候が極端に暑くなるか、反対に寒冷な気候になることが考えられるといいます。

地球の海水の起源は、水を多く含んだ岩石(含水岩石)や氷でできた天体ではないかと考えられてきました。水を含んだ小天体が地球へ飛来したことで、地球に水がもたらされたのではないかというわけです。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小惑星探査機「はやぶさ2」が採取した小惑星「リュウグウ」(162173 Ryugu)のサンプルからは、実際に液体の水が見つかっています。

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ところが、赤色矮星のハビタブルゾーンを公転する惑星が持つ水の量を従来の理論をもとに推定すると、水でできた惑星と表現できるほど大量の水が存在するか、逆に水がまったく存在しないかのどちらかになってしまい、地球のように適度な量の水を持つ惑星は存在しないとされてきたといいます。今回、木村さんと生駒さんは、適量の水を持つ惑星が本当に赤色矮星の周りには存在しないのかを確かめるために、数値シミュレーションを行いました。

【▲ 形成期の岩石惑星において、原始大気とマグマオーシャンとの反応で水(水蒸気)が生成される状態のイメージ図(Credit: 木村真博)】

【▲ 形成期の岩石惑星において、原始大気とマグマオーシャンとの反応で水(水蒸気)が生成される状態のイメージ図(Credit: 木村真博)】

木村さんと生駒さんは、水を含んだ小天体の飛来だけでなく、惑星に水がもたらされる別の過程も考慮しました。惑星は、若い星を取り囲むガスと塵でできた原始惑星系円盤で形成されると考えられています。円盤の中では塵が集まって微惑星になり、微惑星が集まって原始惑星へと成長していきます。惑星の表面は相次ぐ天体衝突などの熱によって溶融し、マグマオーシャンが広がると予想されています。この時、惑星が大気として円盤から獲得した水素ガスと、溶融したマグマに含まれる酸化物との間で化学反応が起きて、水が生成されるといいます。木村さんと生駒さんはこの反応も考慮し、惑星の成長や軌道の進化を最新の理論にもとづいて計算する数値モデル「惑星種族合成モデル」を開発して、分析を行いました。

その結果、赤色矮星を公転する系外惑星では、大気中の水生成反応によってさまざまな量の水を持つ可能性が示されました。半径が地球の1.3倍以下で、初期から中期の赤色矮星を公転する系外惑星のうち、生命の居住に適した量の海水を持つものは5~10パーセントと推定されています。木村さんは「地球と同じくらいの大きさで同じくらいの水量を持つ惑星は、数パーセントにものぼるのではないか」とコメントしています。

【▲ 赤色矮星(質量は太陽の0.3倍)のハビタブルゾーンに位置する系外惑星(質量は地球の0.3~3倍)で予測された海水量分率の頻度分布。緑:含水岩石の獲得のみを考慮した従来モデルの計算結果。オレンジ:原始大気中の水生成反応を考慮した今回の研究のモデルを用いた結果。点線は現在の地球の海水量分率(Credit: 国立天文台)】

【▲ 赤色矮星(質量は太陽の0.3倍)のハビタブルゾーンに位置する系外惑星(質量は地球の0.3~3倍)で予測された海水量分率の頻度分布。緑:含水岩石の獲得のみを考慮した従来モデルの計算結果。オレンジ:原始大気中の水生成反応を考慮した今回の研究のモデルを用いた結果。点線は現在の地球の海水量分率(Credit: 国立天文台)】

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赤色矮星は太陽の周辺にも数多く存在しており、その周囲を公転する系外惑星が国立天文台ハワイ観測所の「すばる望遠鏡」などによって発見されています。国立天文台によると、すばる望遠鏡などを用いた探査計画では赤色矮星のハビタブルゾーンを公転する岩石惑星が100個程度見つかると試算されており、生駒さんは「そのうちの数個は、地球のように適量の海水を持ち、温暖な気候を保持すると予測されます」と期待を寄せています。

今後、系外惑星の大気成分を調べることができる「ジェイムズ・ウェッブ」宇宙望遠鏡などによる詳細な観測を通して、赤色矮星の周りで適度な量の海を持つ系外惑星が確認されれば、生命を持つ惑星に必要な条件や、地球の形成についての新たな知見が得られるかもしれません。

 

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Source

  • Image Credit: NASA Ames/JPL-Caltech/T. Pyle; 木村真博; 国立天文台
  • 国立天文台 科学研究部 - 赤色矮星のまわりに地球のような海惑星の存在を予測
  • 国立天文台 - 赤色矮星の周りに地球のような海惑星の存在を予測

文/松村武宏

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