【▲ 超新星残骸「RCW 86」(Credit: CTIO/NOIRLab/NSF/AURA; Image processing: T.A. Rector (University of Alaska Anchorage/NSF’s NOIRLab), M. Zamani (NSF’s NOIRLab) & D. de Martin (NSF’s NOIRLab))】
【▲ 超新星残骸「RCW 86」(Credit: CTIO/NOIRLab/NSF/AURA; Image processing: T.A. Rector (University of Alaska Anchorage/NSF’s NOIRLab), M. Zamani (NSF’s NOIRLab) & D. de Martin (NSF’s NOIRLab))】

こちらは「ケンタウルス座」にある約8000光年先の超新星残骸「RCW 86」です。超新星残骸とは、大質量星や白色矮星などによる超新星爆発が起きた後に観測される天体のこと。超新星爆発にともなって発生した衝撃波が周囲へ広がってガスを加熱することで、可視光線やX線といった電磁波が放射されています。

画像を公開した米国科学財団(NSF)の国立光学・赤外天文学研究所(NOIRLab)によると、RCW 86を形成したのは白色矮星と恒星からなる連星で起きる「Ia型超新星」によって形成されたと考えられています。白色矮星は、太陽のように超新星爆発を起こさない比較的軽い星(質量が太陽の8倍以下)が恒星としての死を迎えた後に進化した天体です。

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連星をなす恒星の片方が寿命を迎えて白色矮星になると、白色矮星と恒星からなる連星が誕生することになります。このような連星では恒星から流れ出た水素ガスが白色矮星に降り積もり、白色矮星の質量が太陽の約1.4倍(チャンドラセカール限界)に達することで超新星爆発が起きることがあります。これがIa型超新星です。

RCW 86を形成した超新星は、過去の人類に目撃されていたかもしれません。今から1800年以上前の西暦185年、現在のケンタウルス座とコンパス座の間に「客星」(※)が出現して、8か月間に渡って観測されたという記録が中国の歴史書「後漢書」に残されているといいます。RCW 86が見つかったのは西暦185年の客星が観測されたのと同じ領域であり、この客星は記録が残されているものとしては最古の超新星だと考えられていることから、RCW 86は観測史上最古の超新星によって形成された超新星残骸の可能性があるようです。

※…突然出現したように見える天体のこと。超新星、新星、彗星など

冒頭の画像はセロ・トロロ汎米天文台(CTIO)のSMARTS 0.9m望遠鏡を使って撮影されたもので、NOIRLabから2022年9月7日付で公開されています。

 

関連:淡く儚い輝き。テーブルさん座の超新星残骸をハッブルが撮影

Source

  • Image Credit: CTIO/NOIRLab/NSF/AURA; Image processing: T.A. Rector (University of Alaska Anchorage/NSF’s NOIRLab), M. Zamani (NSF’s NOIRLab) & D. de Martin (NSF’s NOIRLab)
  • NOIRLab - Dynastic Vibes
  • チャンドラX線センター - RCW 86: All Eyes on Oldest Recorded Supernova

文/松村武宏

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