【▲ 渦巻銀河「NGC 3981」(Credit: ESO)】
【▲ 渦巻銀河「NGC 3981」(Credit: ESO)】

こちらは「コップ座」の方向約6200万光年先にある渦巻銀河「NGC 3981」です。銀河の内側に広がる赤く彩る領域を、躍動感あふれる渦巻腕(渦状腕)が取り巻いている様子が捉えられています。この画像は、科学観測の合間に魅力的な天体の写真を撮影・公開するヨーロッパ南天天文台(ESO)の「Cosmic Gems(宇宙の宝石)」プログラムのもとで取得されました。

渦巻銀河は、星やガスなどが集まった明るい中心部分の膨らみ「銀河バルジ」を、渦巻腕がある「銀河円盤」が取り囲む構造をしています。銀河円盤は整った形をしていることもあれば、重力を介した銀河どうしの相互作用によって渦巻腕が長く引き伸ばされていることもあります。画像を公開したESOによると、外側に引き伸ばされたように見えるNGC 3981の渦巻腕は、過去に別の銀河と接近して重力相互作用した結果ではないかと考えられています。

また、銀河円盤内側の赤い領域はHII(エイチツー)領域と呼ばれています。ここは若く高温な大質量星から放射された紫外線によって電離した水素ガスが赤い光を放っている領域で、ガスと塵を材料に星が形成される星形成の現場でもあります。赤く彩られたHII領域と大質量星の青い光に彩られた渦巻腕とのコントラストが、美しさを感じさせます。

なお、NGC 3981の中心を基準に1時の方向を見ると、赤・緑・青の3色に塗り分けられた1本のかすかな線が写っています。ESOによると、これは画像の取得時に写り込んだ太陽系内の小惑星とのこと。小惑星は背景の星々や銀河に対して短時間で移動しているように見えるため、異なる波長を通すフィルターを切り替えながら撮影すると、このような色分けされた線状に写ります。

-PR-

冒頭の画像はESOが運営するチリのパラナル天文台にある「超大型望遠鏡(VLT)」の観測装置「FORS2」を使って取得された画像をもとに作成され、2018年9月12日付で公開されたもので、ESOのTwitter公式アカウントが2022年6月28日付で改めて紹介しています。

 

関連:ちらりと見える背後の銀河。ハッブルが撮影した“ヘルクレス座”の3つの銀河

Source

  • Image Credit: ESO
  • ESO - A Galactic Gem

文/松村武宏

-ads-

-ads-