【▲ 重力レンズ効果を受けた銀河「SGAS J143845+145407」(Credit: ESA/Hubble & NASA, J. Rigby)】

【▲ 重力レンズ効果を受けた銀河「SGAS J143845+145407」(Credit: ESA/Hubble & NASA, J. Rigby)】

こちらは「うしかい座」の一部分(1.57×1.55分角の範囲)を捉えた画像です。画像中央の銀河をよく見ると、まるで銀河から吹き出した炎のような天体が写っているのがわかりますでしょうか。欧州宇宙機関(ESA)によると、「SGAS J143845+145407」(以下「SGAS J1438」)と呼ばれているこの天体の正体は、「重力レンズ」効果によって像が歪められた遠方の銀河だといいます。

重力レンズとは、天体の質量によって時空間が歪むことで、その向こう側にある天体から発せられた光の進行方向が変化し、地球からは像が歪んだり拡大して見えたりする現象のこと。この場合、約71億光年離れているSGAS J1438を発した光の進行方向が、約30億光年先にある銀河団「SDSS J1438+1454」の重力によって変化し、地球からはこのような鏡像として見えているようです。画像中央の銀河とSGAS J1438はたまたま同じ方向に見えているだけで、地球からの距離には40億光年ほどの違いがあることになります。

通常の方法では遠すぎたり暗すぎたりして観測が難しい天体も、重力レンズ効果を「天然の望遠鏡」として利用することで、観測できる場合があります。最近では重力レンズ効果を利用して、約129億光年先にある単一の星とみられる天体が見つかったとする研究成果が発表されました。また、重力レンズ効果を受けた幾つもの天体の像を調べることで、電磁波では直接観測することができない暗黒物質(ダークマター)が銀河団でどのように分布しているのかを知ることもできます。

関連:ハッブル宇宙望遠鏡、129億光年遠方の星「エアレンデル」を観測


冒頭の画像は「ハッブル」宇宙望遠鏡に搭載されている「掃天観測用高性能カメラ(ACS)」「広視野カメラ3(WFC3)」を使って取得された画像(可視光線と近赤外線のフィルター合計3種類を使用)をもとに作成されたもので、ハッブル宇宙望遠鏡の今週の一枚としてESAから2022年7月18日付で公開されています。

〈記事中の距離は、天体を発した光が地球で観測されるまでに移動した距離を示す「光路距離」(光行距離)で表記しています〉

 

関連:ハッブル撮影の美しい天体。暗黒星雲の向こう側で輝く球状星団

Source

  • Image Credit: ESA/Hubble & NASA, J. Rigby
  • ESA/Hubble - Lens Flair
  • Dunham et al. - Lens Model and Source Reconstruction Reveal the Morphology and Star Formation Distribution in the Cool Spiral LIRG SGAS J143845.1+145407

文/松村武宏

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