こちらは「ジェイムズ・ウェッブ」宇宙望遠鏡を使って撮影された木星の画像です。ウェッブ宇宙望遠鏡に搭載されている観測装置のひとつ、近赤外線カメラ「NIRCam」を使って取得されたもので(波長2.12マイクロメートルのフィルターを使用)、アメリカ航空宇宙局(NASA)や欧州宇宙機関(ESA)から2022年7月14日付で公開されました。
2021年12月に打ち上げられたウェッブ宇宙望遠鏡は、2022年夏から本格的な科学観測を開始しています。2022年7月12日には最初の高解像度画像や分光観測データが公開されていますが、今回公開された木星の画像はウェッブ宇宙望遠鏡の試運転中に取得されたものとなります。
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ウェッブ宇宙望遠鏡は主に赤外線で観測を行うため、「ハッブル」宇宙望遠鏡を使って取得された画像(記事の最後に掲載しています)などで見慣れた木星とは、また違った印象を受けます。NASAによると、南半球の右側には地球がすっぽり入るサイズの「大赤斑」が見えていますが、ここでは白っぽく明るい領域として写っています。木星の左側に明るく写っているのはガリレオ衛星のひとつ「エウロパ」で、大赤斑の左隣にある暗い点は木星表面に落ちたエウロパの影とされています。
また、NIRCamを使って別の波長で取得されたこちらの画像(波長3.23マイクロメートルのフィルターを使用)も公開されています。ここでは「テーベ」(エウロパを基準に11時の方向)や「メティス」(木星の中心を基準に4時の方向)といった別の衛星や木星の環を、はっきりと識別することができます。
NASAによれば、ウェッブ宇宙望遠鏡はエウロパや土星の衛星エンケラドゥスから噴出する物質を調べるためにも用いられる予定です。エウロパやエンケラドゥスといった一部の氷衛星では、外殻の下に大量の水をたたえた内部海が存在すると予想されています。ウェッブ宇宙望遠鏡は衛星表面から噴出する間欠泉を捜索したり、噴出物の組成を分析したりするために観測を行うといいます。
氷衛星の観測に期待を寄せる研究者たちは、明るい木星や土星のすぐ近くに見える衛星や環をウェッブ宇宙望遠鏡が捉えられる証として、これらの画像が取得される日を待ち望んでいたようです。NASAゴダード宇宙飛行センターの惑星科学者Stefanie Milamさん(ウェッブ宇宙望遠鏡の惑星科学ミッションの副プロジェクトサイエンティスト)は「間違いなく驚くべきことであり、素晴らしいことです」とコメントしています。
130億光年以上離れた遥か彼方の銀河から、より身近な太陽系内の天体まで観測するウェッブ宇宙望遠鏡の活躍に、今から期待が高まります。
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Source
- Image Credit: NASA, ESA, CSA, and B. Holler and J. Stansberry (STScI)
- NASA - Webb Images of Jupiter and More Now Available In Commissioning Data
- ESA/Webb - Jupiter and Europa (NIRCam) Commissioning Image
文/松村武宏