ハッブル撮影の美しい天体。暗黒星雲の向こう側で輝く球状星団
【▲ 球状星団「ターザン2」(Credit: ESA/Hubble & NASA, R. Cohen)】
【▲ 球状星団「ターザン2」(Credit: ESA/Hubble & NASA, R. Cohen)】
【▲ 球状星団「ターザン2」(Credit: ESA/Hubble & NASA, R. Cohen)】

こちらは「さそり座」の方向約3万2000光年先にある球状星団「ターザン2(Terzan 2)」です。球状星団とは、数万~数百万個の恒星が球状に集まっている天体のこと。天の川銀河ではこれまでに150個ほどの球状星団が見つかっています。

ターザン2がある「さそり座」は、天の川銀河の中心に近い方向に見える星座です。この方向には数多くの星や星間物質(ガスや塵)が集まっている銀河中心部分の膨らみ「銀河バルジ」がありますし、塵が豊富な暗黒星雲も帯のように連なっています。

塵には星から放射された光(特に波長の短い青色光)を吸収・散乱させやすい性質があるので、星からの光を遮ったり、実際よりも赤っぽく見えるように変えてしまったりします。ただし、可視光線の赤色光や近赤外線といった一部の波長は塵を比較的通過しやすいため、塵の向こう側にある天体を観測するのに役立ちます。

天の川銀河の中心方向に見えるターザン2を捉えたこの画像は、可視光線だけでなく赤外線の波長で取得された画像も使って作成されました。画像の色は擬似的に着色されたもので、青は可視光線、赤は赤外線に割り当てられています。視野いっぱいに広がった星々のコントラストが美しさを感じさせる一枚です。

冒頭の画像は「ハッブル」宇宙望遠鏡に搭載されている「掃天観測用高性能カメラ(ACS)」および「広視野カメラ3(WFC3)」を使って取得された画像(可視光線と近赤外線のフィルター合計3種類を使用)をもとに作成されたもので、ハッブル宇宙望遠鏡の今週の一枚としてESAから2022年7月11日付で公開されています。

 

関連:ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した“いて座”の球状星団「NGC 6569」

Source

  • Image Credit: ESA/Hubble & NASA, R. Cohen
  • ESA/Hubble - Portrait of a Globular Cluster

文/松村武宏

Last Updated on 2024/09/27