【▲ 小惑星「2021 QM1」の公転軌道(青)を示した図。水星・金星・地球・火星(Mercury, Venus, Earth, Mars)の公転軌道も描かれている(Credit: ESA / PDO)】

【▲ 小惑星「2021 QM1」の公転軌道(青)を示した図。水星・金星・地球・火星(Mercury, Venus, Earth, Mars)の公転軌道も描かれている(Credit: ESA / PDO)】

欧州宇宙機関(ESA)は6月29日、2021年に発見された小惑星「2021 QM1」の追跡観測を行った結果、リスクの高い小惑星のリストから除外されたことを明らかにしました。2021 QM1の推定直径は50mで、30年後の2052年4月2日に3000分の1の確率で地球へ衝突する可能性があったといいます(現在は否定)。

2021 QM1は米国アリゾナ州のレモン山天文台で実施されている「レモン山サーベイ」によって、2021年8月28に発見されました。地球に接近する軌道を描く他の地球近傍天体(NEO)と同じように、2021 QM1も世界各地の望遠鏡による定期的な追跡観測が始まります。すると、2021 QM1は2052年に地球へ危険なほど接近する可能性が示されたといいます。

間もなく2021 QM1はESAが対策に取り組むリスクの高い小惑星のリストに追加され、データが集められることになりました。数晩程度の観測で算出された軌道にはある程度の不確実性が残るため、リスクを評価するにはより詳細な観測が必要です。ESAによると、発見当初は地球へ衝突する可能性が高いと思われていた小惑星も、より多くのデータが集められ不確実性が減るにつれて、安全であると確認されることがよくあるといいます。

しかし、2021 QM1の場合はタイミングが良くありませんでした。2021 QM1は近日点距離0.501天文単位・遠日点距離2.557天文単位の軌道(アポロ群に分類)を690.6日(約1.9年)周期で公転しています。発見時は地球の公転軌道の外側から内側へ入り込む頃だったため、やがて地球から見た2021 QM1は太陽へ近付きすぎてしまい、数か月間に渡って観測できなくなってしまったのです。そのうえ、太陽から離れて見えるようになる頃の2021 QM1は、軌道上でも太陽から遠ざかるため、検出するには暗くなりすぎている可能性があったといいます。

【▲口径8.2mの望遠鏡4基で構成されるヨーロッパ南天天文台の「超大型望遠鏡(VLT)」(Credit: ESO/H.H.Heyer)】

【▲口径8.2mの望遠鏡4基で構成されるヨーロッパ南天天文台の「超大型望遠鏡(VLT)」(Credit: ESO/H.H.Heyer)】

そこで天文学者たちは、ヨーロッパ南天天文台(ESO)の「超大型望遠鏡(VLT)」(口径8.2m)による観測を2022年5月24日に実施。その結果、見かけの明るさが27等(肉眼で見える限界とされる6等星と比べて約2億5000万分の1の明るさ)という非常に暗い2021 QM1を検出することに成功したといいます。新たな観測によって得られたデータをもとに軌道を計算したところ、2021 QM1が2052年に地球へ衝突する可能性は否定され、リスクの高い小惑星のリストからも除外されました。

ただしESAによれば、これまでに100万個以上が見つかっている小惑星のうち約3万個が地球の近くを通過していて、衝突のリスクが懸念される小惑星のリストにはまだ1378個が残されています(2022年6月30日時点)。また、2021 QM1が1年前まで見つかっていなかったことからもわかるように、未発見の小惑星もまだまだあると予想されています。

【▲ 超大型望遠鏡(VLT)を使って検出された2021 QM1(赤丸)。背景の星々を除外する画像処理が施されている(Credit: ESA)】

【▲ 超大型望遠鏡(VLT)を使って検出された2021 QM1(赤丸)。背景の星々を除外する画像処理が施されている(Credit: ESA)】

2013年2月にロシアのチェリャビンスク州上空で爆発して約1600名の負傷者や建物の被害をもたらした天体の直径は10m前後1908年6月にシベリアへ落下していわゆる「ツングースカ大爆発」を引き起こしたとみられる天体の直径は50~80mと推定されています。2021 QM1(推定直径50m)はチェリャビンスク州上空で爆発した天体よりも大きく、ツングースカ大爆発を起こした天体と同程度か少し小さいことになりますから、仮に地球へ衝突すれば、場所によっては大きな被害が生じることも考えられます。

新たな小惑星を捜索し、深刻な被害をもたらす天体衝突を事前に予測する取り組みは「惑星防衛(プラネタリーディフェンス)」と呼ばれています。今はまだ衝突が懸念される小惑星を発見してもリスクを評価することしかできませんが、アメリカ航空宇宙局(NASA)は小惑星「ディディモス」の衛星「ディモルフォス」に無人探査機を衝突させて軌道変更を試みるミッション「DART」(Double Asteroid Redirection Test、二重小惑星方向転換試験)を現在実施しており、探査機は2022年9月26日にディモルフォスへ衝突する予定です。将来は衝突の可能性がある小惑星の軌道を積極的に変更するミッションが実施されるようになるかもしれません。

【▲2重小惑星「ディディモス」と「DART機」、「LICIACube」のイラスト(Credit: NASA/Johns Hopkins APL/Steve Gribben)】

【▲2重小惑星「ディディモス」と「DART機」、「LICIACube」のイラスト(Credit: NASA/Johns Hopkins APL/Steve Gribben)】

 

関連:2023年7月に地球から1000万km先を通過する小惑星「2022 AE1」一時は衝突リスクの懸念も

Source

  • Image Credit: ESA / PDO
  • ESA - Impact in 2052 ruled out as ESA counts down to Asteroid Day
  • NEOCC - Asteroid 2021 QM1 removed from NEOCC’s risk list pole position

文/松村武宏