【▲ 白色矮星「G238-44」の想像図(Credit: NASA, ESA, Joseph Olmsted (STScI))】

【▲ 白色矮星「G238-44」の想像図(Credit: NASA, ESA, Joseph Olmsted (STScI))】

こちらは「こぐま座」の方向約86光年先にある白色矮星「G238-44」の想像図です。星系の中心で輝くG238-44に向かって、幾つもの小天体が落下していく様子を描いています。

白色矮星とは、太陽のように比較的軽い恒星(太陽の8倍以下の質量)が赤色巨星へと進化した後に、ガスを失ってコア(核)だけが残った天体のこと。地球と同じくらいのサイズで太陽の半分~1個分の質量を持つとされる、高密度な天体です。白色矮星は中心部で核融合反応を起こさず余熱で輝くのみなので、「恒星としての死」を迎えた姿とも言えます。

赤色巨星に進化した恒星の外層は大きく膨張し、周囲にガスを放出しながら白色矮星に進化するとみられています。もしもその恒星の周囲に惑星などが存在していた場合、この過程で膨張した恒星に飲み込まれたり軌道が変化して星に落下したりすると考えられています。

■金属を含む岩石天体と氷天体の両方が落下したことを示す初の証拠か

2022年6月にカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)を卒業したTed Johnsonさんを筆頭とする研究チームは、「ハッブル」宇宙望遠鏡などによる観測データをもとに、G238-44の大気における窒素・酸素・マグネシウム・ケイ素・鉄といった元素の存在量を測定しました。その結果、地球や小惑星のように金属を含む岩石天体と、彗星のような氷天体両方が落下した証拠が得られたといいます。

研究チームによれば、G238-44の大気からは非常に高い存在量の鉄と、予想外に高い存在量の窒素が検出されました。豊富な鉄は地球のような岩石惑星の中心にある金属コアの証拠であり、窒素氷天体の存在を意味すると研究チームは結論付けています。Johnsonさんは「データに最も適合するのは、水星のような天体由来の物質と、彗星のように氷と塵でできている天体由来の物質が、約2対1の比率で混合しているケースです」と語ります。

白色矮星に落下した天体に由来すると思われる物質が白色矮星の大気から検出されたのは今回が初めてではなく、過去には落下した岩石惑星の組成を推定した研究成果も発表されています。太陽系外惑星の組成を直接調べることはできませんが、白色矮星の大気中に存在する元素を分析することで、かつて存在していた系外惑星の組成を探ることができるのです。

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しかし今回の研究では、G238-44には岩石天体だけでなく氷天体も落下したと結論付けられました。2種類の天体が白色矮星に落下した可能性が示されたのは、今回が初めてのことだといいます。研究論文の共著者であるUCLAのBenjamin Zuckerman教授は「この白色矮星(G238-44)で検出された様々な元素の存在量は、岩石質の天体と揮発性物質が豊富な天体の両方に由来しているように見えます。これは何百もの白色矮星に関する研究でも初の事例です」とコメントしています。

【▲ 予想されるG238-44星系の模式図(日本語表記は筆者が追加)。白色矮星の周囲には破壊された天体でできた降着円盤が形成されている。星から離れた領域では巨大ガス惑星が生き延びているかもしれない。※元バージョンはこちら(Credit: NASA, ESA, Joseph Olmsted (STScI))】

【▲ 予想されるG238-44星系の模式図(日本語表記は筆者が追加)。白色矮星の周囲には破壊された天体でできた降着円盤が形成されている。星から離れた領域では巨大ガス惑星が生き延びているかもしれない。※元バージョンはこちら(Credit: NASA, ESA, Joseph Olmsted (STScI))】

金属を含む岩石天体と氷天体の両方が落下したことを示す証拠は、恒星の死がもたらす混乱の規模を理解する助けになりました。

太陽に近付くにつれてガスを放出する彗星の活動からもわかるように、恒星に近い領域では氷は揮発して失われてしまいます。太陽系の場合、太陽に近い小惑星帯には岩石質の小惑星が分布し、太陽から遠いエッジワース・カイパーベルト以遠には氷を主成分とする小天体が分布しています。

岩石天体と氷天体の両方が落下したということは、惑星系の幅広い領域から白色矮星に向かって天体が落下したことを意味します。UCLAの発表によると、星は白色矮星としての新たな生涯を開始してから1億年以内に、恒星に近い領域と遠い領域(小惑星帯とエッジワース・カイパーベルトのような)の両方から天体を捕獲できる可能性が、今回の研究では確認されたといいます。

今から数十億年後には、太陽も赤色巨星を経て白色矮星に進化すると予想されています。太陽に近い地球などの岩石惑星は蒸発するいっぽうで、木星から海王星までの太陽から遠い惑星は生き延びる可能性があり、木星の重力によって軌道を乱された小惑星は白色矮星になった太陽へ落下していくだろうとJohnsonさんは語ります。未来の太陽系は、研究チームが調べたG238-44の惑星系にとても良く似た運命を辿ることになるようです。

 

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Source

  • Image Credit: NASA, ESA, Joseph Olmsted (STScI)
  • UCLA - Dead star’s cannibalism of its planetary system is most far-reaching ever witnessed
  • NASA/STScI - Dead Star Caught Ripping Up Planetary System

文/松村武宏