ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した銀河団「エイベル1351」
【▲ 銀河団「Abell(エイベル)1351」(Credit: ESA/Hubble & NASA, H. Ebeling; Acknowledgement: L. Shatz)】
【▲ 銀河団「Abell(エイベル)1351」(Credit: ESA/Hubble & NASA, H. Ebeling; Acknowledgement: L. Shatz)】

こちらは「おおぐま座」の方向約37億光年先にある銀河団「Abell(エイベル)1351」です。視野全体に散りばめられた楕円銀河や渦巻銀河といった様々な銀河に入り混じるように、細長く伸びた筋状の天体が幾つも写っているのがわかりますでしょうか。

銀河団とは、数百~数千の銀河が集まっている巨大な天体のこと。無数の星々やガスなどの集合体である銀河が何百~何千も集まっているのですから、銀河団は途方もない質量を持つことになります。

画像の筋状の天体は、エイベル1351による「重力レンズ」効果を受けた天体の像です。重力レンズとは、手前にある天体の質量が時空を歪めることで、奥にある天体を発した光の進行方向を変化させる現象のこと。この場合、地球から見てエイベル1351の向こう側にある銀河などを発した光の進む向きが変化し、地球からは細長く引き伸ばされた像として見えているわけです。

重力レンズ効果を受けた天体の像は、歪むだけではなく拡大されることもあります。最近では重力レンズ効果を利用して、約129億光年先にある単一の星とみられる天体が見つかったとする研究成果が発表されています。また、研究者は重力レンズ効果を受けた幾つもの天体の像を調べることで、電磁波では直接観測することができない暗黒物質(ダークマター)が、銀河団でどのように分布しているのかを知ることもできます。

関連:ハッブル宇宙望遠鏡、129億光年遠方の星「エアレンデル」を観測

冒頭の画像は「ハッブル」宇宙望遠鏡に搭載されている「広視野カメラ3(WFC3)」「掃天観測用高性能カメラ(ACS)」を使って取得した画像をもとに作成されたもので、ハッブル宇宙望遠鏡の今週の一枚として欧州宇宙機関(ESA)から2022年6月20日付で公開されています。

〈記事中の距離は、天体から発した光が地球で観測されるまでに移動した距離を示す「光路距離」(光行距離)で表記しています〉

 

関連:星がぎっしり詰まった宇宙の宝箱。ハッブルが撮影した球状星団「ターザン9」

Source

  • Image Credit: ESA/Hubble & NASA, H. Ebeling; Acknowledgement: L. Shatz
  • ESA/Hubble - Snapshot of a Massive Cluster

文/松村武宏