こちらは南天の「りゅうこつ座」の方向約7500光年先にある散光星雲「イータカリーナ星雲」の一部、「R44」と呼ばれる領域を捉えた画像です。柱や山岳のような形をしているのは、塵とガスでできた巨大な雲。可視光線の3つの波長で取得されたデータを着色・合成することで作成されたこの画像は、まるで幻想的な世界を描いた絵画のようにも見えます。
画像を公開したヨーロッパ南天天文台(ESO)によると、チリのパラナル天文台にあるESOの「超大型望遠鏡(VLT)」は、このような柱をイータカリーナ星雲で10本観測しています。同様の天体には「ハッブル」宇宙望遠鏡が撮影した「Pillars of Creation(創造の柱)」の名で知られる暗黒星雲があります。これになぞらえて、ESOはイータカリーナ星雲の柱を「Pillars of Destruction(破壊の柱)」と表現しています。
塵やガスの雲のなかでは新たな星が形成されますが、その星は自らを生み出した雲の破壊を始めます。ESOによると、星雲で形成された大質量星は電離放射線を大量に放ち、雲のガスを電離・散逸させていきます。このプロセスは光蒸発と呼ばれています。
研究者が観測データを調べたところ、柱の近くにある星の電離放射線の量と、柱から散逸して失われた質量の間には明確な相関関係が認められたといいます。そのいっぽうで、星から放射される電磁波や恒星風は雲の中に高密度な部分を形成する助けとなって、新たな星の形成につながる可能性もあるようです。
冒頭の画像はVLTの広視野面分光観測装置「MUSE」が取得した画像をもとに作成され、2016年11月2日付で公開されたもので、ESOのTwitter公式アカウントが2022年5月10日付で改めて紹介しています。
https://twitter.com/ESO/status/1523921070193004545
Source
- Image Credit: ESO/A. McLeod
- ESO - Pillars of Destruction
文/松村武宏