まるで数字のような相互作用銀河「Arp 147」ハッブル宇宙望遠鏡が撮影
【▲ 相互作用銀河「Arp 147」(Credit: NASA, ESA and M. Livio (STScI))】
【▲ 相互作用銀河「Arp 147」(Credit: NASA, ESA and M. Livio (STScI))】
【▲ 相互作用銀河「Arp 147」(Credit: NASA, ESA and M. Livio (STScI))】

こちらは「くじら座」の方向約4億4000万光年先にある2つの銀河。地球からは真横に近い角度で見えている左側の楕円銀河と、リング構造を持つ残骸になった右側の渦巻銀河がペアになって、まるで数字の「10」を描いているかのように見えます。

2つの銀河は重力を介して互いに影響を及ぼし合っている相互作用銀河です。1966年に天文学者のホルトン・アープがまとめた特異銀河(特異な形態を持つ銀河)のカタログ「アープ・アトラス」には「Arp 147」として収録されています。

アメリカ航空宇宙局(NASA)によると、「0」に見える右側の銀河のリング構造は、「1」に見える左側の銀河と衝突したことで形成されたと考えられています。2つの銀河の衝突によって生じた密度波が円形に広がったことで星形成活動が刺激され、数多くの大質量星が誕生したことでこのような構造が形成されたのだといいます。リングを彩る青色は、活発な星形成活動によって誕生した若く高温な星々の輝きです。そのいっぽうで左側の銀河の形態はそれほど大きく乱れてはおらず、滑らかなリング構造を持っていることがわかります。

冒頭の画像はかつてハッブル宇宙望遠鏡に搭載されていた観測装置「広域惑星カメラ2(WFPC2)」による観測データ(可視光線と赤外線のフィルターを使用)をもとに作成され、2008年10月30日付で公開されたもので、NASAのハッブル宇宙望遠鏡Twitter公式アカウントが2022年4月27日付で改めて紹介しています。

ちなみに、NASAのX線観測衛星「チャンドラ」の官制を担うスミソニアン天体物理観測所のチャンドラX線センターでは、ハッブル、チャンドラ、赤外線宇宙望遠鏡「スピッツァー」、そして紫外線宇宙望遠鏡「GALEX」の観測データを合成したArp 147の画像を公開しています(X線などの波長は擬似的に着色されています)。

同センターによると、チャンドラは右側の銀河でブラックホール連星(ブラックホールと恒星からなる連星)と思われる明るいX線源を9つ検出しており、リング構造は「ブラックホールの巨大なリング(Giant Ring of Black Holes)」と表現されています。また、現在私たちが観測しているのは、星形成活動のピークを過ぎてから1500万年ほど経った姿である可能性が考えられるとのことです。

【▲ 4つの宇宙望遠鏡が捉えたArp 147(疑似カラー)。チャンドラ(ピンク)、ハッブル(赤・緑・青)、GALEX(緑)、スピッツァー(赤)によって取得された画像をもとに作成(Credit: X-ray: NASA/CXC/MIT/S.Rappaport et al, Optical: NASA/STScI))】
【▲ 4つの宇宙望遠鏡が捉えたArp 147(疑似カラー)。チャンドラ(ピンク)、ハッブル(赤・緑・青)、GALEX(緑)、スピッツァー(赤)によって取得された画像をもとに作成(Credit: X-ray: NASA/CXC/MIT/S.Rappaport et al, Optical: NASA/STScI))】

 

関連:ハッブル宇宙望遠鏡、打ち上げ32周年記念「密集する5つの銀河」公開

Source

  • Image Credit: NASA, ESA and M. Livio (STScI
  • NASA/STScI - Hubble Scores a Perfect Ten
  • ESA/Hubble - The NASA/ESA Hubble Space Telescope is back in business
  • Chandra X-ray Center - Arp 147: Giant Ring of Black Holes

文/松村武宏