チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星(67P/Churyumov-Gerasimenko)のクローズアップ画像(Credit:ESA/Rosetta/MPS)

【▲チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星(67P/Churyumov-Gerasimenko)のクローズアップ画像(Credit:ESA/Rosetta/MPS)】

欧州宇宙機関(ESA)の彗星探査機「ロゼッタ」2015年に「チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星(67P/Churyumov-Gerasimenko)」から大量の分子状酸素を検出し、科学者を驚かせました。

このたび、コーネル大学のJonathan Lunine氏とジョンズ・ホプキンス大学応用物理学研究所のAdrienn Luspay-Kuti氏が率いる国際科学者グループが、彗星表面の氷に加えて、その核に古来の分子状酸素が貯蔵されていることを示唆する研究結果を発表しました。この発見はまた、初期の有機物や分子が、どのようにして太陽系の岩石惑星にたどり着いたかを明らかにする可能性もあります。

彗星の核の周りに広がるガス状のコマは、成分のほとんどが水や一酸化炭素、二酸化炭素であることが知られています。しかし、Lunine氏は「この彗星では、水や他の気体に比べて、分子状酸素が非常に多く測定されたことに科学者たちは驚きました」と語っています。

しかしそれは、表面からだけでなく、核の深部からの分子状酸素の放出を見ていたのです。

今回の論文では、Lunine氏は、自らの専門である化学が活かして、分子状酸素が氷の表面にどのように閉じ込められ、核からどのように出てくるのか、そのプロセスをモデル化しました。

チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星は太陽を周回する際、近日点の約1年前から暖まり始めます。太陽によって暖められた影響と、近日点を過ぎた後の冷却によって、分子状酸素、一酸化炭素、二酸化炭素の放出の関係が変化していることがわかりました。その相関関係の結果、酸素は彗星の表層に閉じ込められ、より多くの古い物質が彗星の内部に留まることになります。


「現実には、彗星は少なくともその形成過程においては、これほど高い酸素量を有していないのです」とLuspay-Kuti氏は語っています。しかし、彗星は上層に閉じ込められた酸素を蓄積しており、彗星が太陽に近づき十分に暖められたとき、酸素が一気に放出されるのです。

さらにLuspay-Kuti氏は「言い換えれば、彗星のコマで測定された酸素の存在量は、必ずしも彗星の核での存在量を反映しているわけではありません」と語っています。

ロゼッタの発見は科学者が最初に想像したほど奇妙ではないのかもしれません。代わりに、この彗星の内部には2つの貯留層があり、実際に存在するよりも多くの酸素があるように見えることを示唆しているというのです。Luspay-Kuti氏によれば「一種の錯覚」なのです。

20220310b_image2_lg(Credit:Johns Hopkins APL / Jon Emmerich)

【▲チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星内部の2つの貯留層から、分子状酸素などの揮発性分子が放出されている様子を描いた図。彗星の軌道は反時計回りで示され、深い貯留層から「二酸化炭素、一酸化炭素、分子状酸素」(クリーム色の点)が絶えず放出されています。青い点は、深い貯留層から表面に向かって移動する間に水の氷に捕らえられた分子状酸素(青でH2O-O2と表示)で、浅い貯留層を形成し、表面が暖められ、彗星が十分に太陽に近づいたときにのみ中身を放出します(Credit:Johns Hopkins APL / Jon Emmerich)】

「貯留層は両方とも重要で、表層に酸素が過剰にあるように見えるという謎を解決し、実際には彗星の深部に酸素の供給源があることを明らかにしています」とLunine氏は語っています。

Lunine氏によれば、彗星が地球上の有機物や水の起源に貢献したという証拠があるとのこと。そして「わたしたちの住む岩石質の惑星が、どのようにして有機物を豊富に含む気体を得たのかがわかれば、わたしたちの惑星がどのようにして居住可能になったのか、また、他の星の惑星系でどのようなことが起こっているのかがわかるのです」と結んでいます。

 

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文/吉田哲郎

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