NASAは2月16日、NASA、NOAA(National Oceanic and Atmospheric Administration=アメリカ海洋大気庁)、USGS(United States Geological Survey=アメリカ地質調査所)などからなる連邦機関間海面上昇タスクホース(The Interagency Sea Level Rise Task Force)が、新しいレポートを公開したと発表しました。
今回のレポートは、2017年のレポートをアップデートするもので、国連により2021年8月に公開されたIPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change=国連気候変動に関する政府間パネル)の第6次評価報告書などの最新の知見が盛り込まれています。
今回、タスクフォースは、氷河や氷床の溶解、大陸と海と氷の複雑な相互作用など海面上昇に影響を与えるプロセスに関する最新の知見を取り入れ、2017年のレポートよりも、その予測の精度を向上させました。
では、さっそくその具体的な内容をみていくことにしましょう。
今回のレポートによれば、温暖化により、アメリカの沿岸部で、2050年までに、海面が平均で25~30cm上昇すると予測されるといいます。これは過去100年間で起こった海面上昇と等しいそうです。
また、今回のレポートによれば、この海面上昇によって、ハリケーンなどに伴う高潮洪水や潮汐洪水(high-tide flooding=訳者意訳)の頻度が増え、その激しさも増すといいます。例えば、中程度の高潮洪水と潮汐洪水を合わせたその平均的な頻度は2050年までに10倍以上にも増えると予測されています。なお、潮汐洪水とは、ハリケーンなどとは関係なく、通常の潮の満ち引きによって沿岸部で引き起こされる洪水です。
これによって、アメリカの沿岸部の地域社会や基幹的な経済インフラは大きな影響を受けることになるといいます。
NASAの長官ビル・ネルソン氏は「現在進行中の気候に関する危機的状況を緩和するために今すぐの行動が求められています」と危機感を滲ませています。
Source
- Image Credit: NASA/B137 (CC-BY)
- NASA - Sea Level to Rise up to a Foot by 2050, Interagency Report Finds
- NOAA - Global and Regional Sea Level Rise Scenarios for the United States
文/飯銅重幸(はんどうしげゆき)