白色矮星「WD1054-226」を公転する残骸の雲と、未発見の系外惑星を描いた想像図(Credit: Mark A. Garlick / markgarlick.com)

【▲ 白色矮星「WD1054-226」を公転する残骸の雲と、未発見の系外惑星を描いた想像図(Credit: Mark A. Garlick / markgarlick.com)】

ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のJay Farihi教授を筆頭とする研究グループは、惑星などの残骸(デブリ)でできたリング構造(a ring of planetary debris)が、白色矮星「WD1054-226」の周囲で見つかったとする研究成果を発表しました。

リングは残骸の雲で構成されているとみられており、これらの雲が周期的かつ等間隔で白色矮星を横切る様子が観測されています。研究グループは、残骸の雲がリングを成す軌道の近くに未発見の太陽系外惑星が存在する可能性を指摘しています。

■65個の雲が約23分間隔で規則的に通過、未発見の系外惑星が雲の構造を保っている?

WD1054-226は「コップ座」の方向およそ117光年先にある白色矮星です。WD1054-226の明るさが変化する様子を分析した研究グループは、約25時間周期でWD1054-226の手前を横切る複数の雲を発見しました。雲は惑星などの天体の残骸でできているとみられており、幅3000km程度の広がりを持つと推定されています。「私たちが観察した地球の月サイズの構造はしっかりした球体ではなく、不規則でほこりのようなものです」(Farihiさん)

興味深いことに、残骸の雲は互いに等しい間隔を保ちながら白色矮星を公転しているようです。研究グループは、等間隔に並んだ65個の雲が約23分ごとに通過しているために、地球から見たWD1054-226の明るさが規則的に暗くなると結論付けました。Farihiさんは「白色矮星の手前を23分ごとに通過するという絶対的な規則性は、現在のところ説明できない謎です」と語ります。

研究グループは、WD1054-226を公転する残骸でできた雲の規則性が、未発見の系外惑星の存在を示しているのではないかと考えています。土星などの環における「羊飼い衛星」(※)のように、WD1054-226を公転する惑星の重力が残骸の雲に影響を及ぼすことで、雲どうしの間隔が保たれているかもしれないというのです。Farihiさんは「このような影響がなければ摩擦と衝突によって構造が散逸し、観測された正確な規則性が失われます」と指摘しています。

※…惑星が持つ環の形状を保つ役割を果たしていると考えられている衛星のこと

白色矮星「WD 1856」(左手前)を公転する系外惑星「WD 1856 b」(奥)の想像図(Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center)

【▲ 白色矮星「WD 1856」(左手前)を公転する系外惑星「WD 1856 b」(奥)の想像図(Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center)】

白色矮星を公転する系外惑星に関しては、過去にも巨大ガス惑星とみられる天体の発見が報告されています。いっぽう、WD1054-226の周囲には、それよりも小さな系外惑星が存在するかもしれません。

研究グループによると、もしもWD1054-226を公転する系外惑星が存在する場合、そのサイズは太陽系の地球型惑星と同程度であり、WD1054-226からの距離は約250万km(地球から太陽までの距離の約1.7パーセント)と予想されています。また、この系外惑星の軌道はWD1054-226のハビタブルゾーン(惑星の表面に液体の水が存在し得る範囲)に位置するといいます。

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白色矮星は、太陽のように比較的軽い恒星が赤色巨星の段階を経て進化した天体です。赤色巨星は外層から周囲の宇宙空間にガスを放出し、その後に残った中心部が白色矮星になると考えられています。

誕生当初の白色矮星は摂氏10万度近い高温で輝くものの、恒星だった頃の予熱で輝いているため、長い時間をかけて冷えていきます。平均的な白色矮星の表面温度は誕生から20億年後には摂氏約5700度まで低下し、さらに80億年かけて摂氏約3700度まで下がるとされています。

白色矮星は死を迎えた恒星が進化した天体と言えますが、表面温度が太陽のような恒星と同程度まで下がる頃には、数十億年という長期間に渡って白色矮星の周囲にハビタブルゾーンが維持されると考えられています。2020年には、もしも白色矮星のハビタブルゾーンを公転する系外惑星が見つかった場合、その大気組成を調べることで生命の兆候を探ることが可能だとする研究成果が発表されています。

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WD1054-226の場合、予想される系外惑星の軌道は少なくとも20億年に渡りハビタブルゾーンに位置するとみられており、今後10億年以上はこの状況が続くようです。また、今回観測された残骸の雲や存在が予想される系外惑星は、WD1054-226が赤色巨星の段階を過ぎた後に形成されたか、別の軌道から移動してきたと考えられています。

ただし、今回の研究ではWD1054-226を公転する系外惑星の確認には至っておらず、より多くの証拠が必要とされています。Farihiさんは、WD1054-226や残骸でできた雲に関するより多くの観測データをコンピューターモデルと比較することで、系外惑星の存在を確認できるかもしれないとコメントしています。

なお、今回の研究ではラ・シヤ天文台(チリ)にあるヨーロッパ南天天文台(ESO)の「新技術望遠鏡」(NTT:New Technology Telescope、口径3.58m)に設置されている高速度カメラ「ULTRACAM」と、アメリカ航空宇宙局(NASA)の系外惑星探査衛星「TESS」(Transiting Exoplanet Survey Satellite)の観測データが用いられました。

 

Source

  • Image Credit: Mark A. Garlick / markgarlick.com
  • UCL - Planetary bodies observed for first time in habitable zone of dead star
  • ウォーリック大学 - Planetary bodies observed in habitable zone of dead star
  • 王立天文学会 - Planetary bodies observed in habitable zone of dead star
  • Farihi et al. - Relentless and complex transits from a planetesimal debris disc

文/松村武宏