約250万光年先の銀河「アンドロメダ銀河(M31)」(Credit: Robert Gendler)

【▲ 約250万光年先の銀河「アンドロメダ銀河(M31)」(Credit: Robert Gendler)】

リバプール・ジョン・ムーア大学のRenuka Pechettiさんを筆頭とする研究グループは、約250万光年先の「アンドロメダ銀河(M31)」に存在する球状星団「B023-G078」の中心に、質量が太陽の約10万倍ある「中間質量ブラックホール」が存在する可能性を示した研究成果を発表しました。

中間質量ブラックホールは、恒星の超新星爆発にともない形成されると考えられている「恒星質量ブラックホール」(質量は太陽の数倍~数十倍)と、様々な銀河の中心に存在するとみられる「超大質量ブラックホール」(質量は太陽の数十万倍~数十億倍以上)の中間にあたる質量を持つブラックホールです。

研究グループはB023-G078について、大きな銀河と重力を介して相互作用した際に星やガスを剥ぎ取られた小さな銀河の中心核である可能性を指摘しています。質量が小さな銀河に存在する中間質量ブラックホールの数を把握するとともに、銀河がどのようにして構築されたのかを学ぶためにも、研究グループはさらなる観測の機会が得られることに期待を寄せています。

■かつての銀河中心核とみられる球状星団に中間質量ブラックホールが存在する可能性

球状星団数十万個ほどの恒星が互いの重力に引き寄せられて密集している天体で、天の川銀河の周囲では150個ほどが見つかっています。研究グループによると、アンドロメダ銀河のB023-G078は大質量の球状星団として知られており、その質量は約620万太陽質量(1太陽質量=太陽1個分の質量)と推定されています。

研究に参加したユタ大学のAnil Sethさんは以前から、B023-G078は何か別の存在ではないかと感じていたといいます。「私は、アンドロメダ銀河で最も質量が大きな天体であるB023-G078が、星やガスを剥ぎ取られた銀河の中心核かもしれないと考えていました。それを証明するにはデータが必要でした」とSethさんは語ります。何年ものあいだ観測を提案し続けてきたというSethさんたちは、ジェミニ天文台の「ジェミニ北望遠鏡」を使った観測の機会を2014年に得ることができました。

アンドロメダ銀河(M31、左)における球状星団B023-G078(右)の位置を示した図(Credit: Iván Éder; HST ACS/HRC; Pechetti et al.)

【▲ アンドロメダ銀河(M31、左)における球状星団B023-G078(右)の位置を示した図(Credit: Iván Éder; HST ACS/HRC; Pechetti et al.)】

研究グループがジェミニ北望遠鏡を使った観測で得たデータと「ハッブル」宇宙望遠鏡によって過去に取得されていた観測データを分析した結果、B023-G078の中心に6.3万~11.7万太陽質量の中間質量ブラックホールが存在する証拠が得られました。研究グループによると、観測によって得られた星の移動速度とモデルを用いて予測した星の移動速度を比較したところ、星団の中心付近を高速で移動している星の速度は、星団の中心にブラックホールが存在すると仮定したモデルに一致したといいます。

Pechettiさんは「私たちが得た恒星の速度は、星団の中心に質量を持った見えざる何かが存在する直接的な証拠をもたらしました」「球状星団で大きなブラックホールが形成されるのは大変難しいことですが、過去に大きな銀河へと落下した小さな銀河の中心核が残骸として取り残されたものだとすれば、ブラックホールが存在しているに違いありません」と語ります。

冒頭でも触れたように研究グループは、中間質量ブラックホールが存在する可能性のある、星やガスを剥ぎ取られた後に残された銀河中心核をさらに多く観測したいと望んでいます。Sethさんは「私たちは大きな銀河が一般的に小さな銀河どうしの合体によって形成されたことを知っていますが、周囲の星やガスを剥ぎ取られた銀河中心核は、過去に起きた銀河の相互作用の詳細を読み解くことを可能にする存在なのです」とコメントしています。

 

関連:中間質量ブラックホールが重力レンズ効果を利用して発見される

Image Credit: Robert Gendler / Iván Éder; HST ACS/HRC; Pechetti et al.
Source: ユタ大学
文/松村武宏