矮小銀河「Henize 2-10」(Credit: NASA, ESA, Zachary Schutte (XGI), Amy Reines (XGI); Image Processing: Alyssa Pagan (STScI))

【▲ 矮小銀河「Henize 2-10」(Credit: NASA, ESA, Zachary Schutte (XGI), Amy Reines (XGI); Image Processing: Alyssa Pagan (STScI))】

こちらは南天の「らしんばん座」の方向およそ3000万光年先にある矮小銀河「Henize 2-10」(別名「Hen 2-10」「ESO 495-21」など)です。矮小銀河は数十億個ほどの恒星が集まった小さな銀河で、その規模は天の川銀河の100分の1程度。天の川銀河の直径が約10万光年とされるのに対し、Henize 2-10の幅は3000光年ほどしかありません。

Henize 2-10は小さな銀河なのですが、新たな星を生み出す星形成活動が盛んなスターバースト銀河のひとつとして知られており、その中心には約100万太陽質量(※1太陽質量=太陽1個分の質量)の超大質量ブラックホールが存在すると考えられています。天の川銀河の中心に存在が確実視されている超大質量ブラックホール「いて座A*(エースター)」の質量はその4倍強の約430万太陽質量と推定されていますから、銀河の規模と比べてかなり重いブラックホールがHenize 2-10には存在するようです。

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ブラックホールはその重力によって周辺の物質を取り込み、接近する星を破壊することさえあります。画像を公開したアメリカの宇宙望遠鏡科学研究所(STScI)によると、より大きな銀河では落下するガスの一部がブラックホール周囲の磁場に加速され、光速に近い速度を持つジェットとして噴出する様子が観測されています。ジェットは経路上にあるガスなどの物質を加熱することがあるため、ブラックホールの活動は低温の星間雲(ガスや塵の集まり)で生じる星形成活動を抑制すると考えられてきました。


しかし、モンタナ州立大学のAmy Reinesさんとその教え子である大学院生のZachary Schutteさんは、「ハッブル」宇宙望遠鏡を使ってHenize 2-10を観測した結果、この銀河の超大質量ブラックホールが230光年離れた場所にある星形成活動を促進させていることが明らかになったとする研究成果を発表しました。

両氏によると、銀河中心のブラックホールとしてはそれほど大きくないHenize 2-10の超大質量ブラックホールはガスを比較的穏やかに流出させており、ガスが衝突した星間雲は程良く圧縮されることで星形成活動が促され、幾つもの星団が形成されているといいます。研究の筆頭著者であるSchutteさんは、ブラックホールからの流出が星形成を抑制するのではなく、新たな星の誕生を引き起こしていたことに驚いたと語ります。

大きな銀河との衝突・合体を経験せず、宇宙の歴史を通して小さな規模を保ってきたHenize 2-10のような矮小銀河。その中心に潜むブラックホールからは、初期宇宙のブラックホールがどのように成長したのかを解き明かすための手がかりが得られるのではないかと期待されています。冒頭の画像はハッブル宇宙望遠鏡の観測装置「掃天観測用高性能カメラ(ACS)」および過去に搭載されていた「広域惑星カメラ2(WFPC2)」の観測データから作成されたもので、ハッブル宇宙望遠鏡を運用するSTScIから2022年1月19日付で公開されています。

 

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Image Credit: NASA, ESA, Zachary Schutte (XGI), Amy Reines (XGI)
Image Processing: Alyssa Pagan (STScI)
Source: STScI
文/松村武宏

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