太陽系外惑星「TOI-2180 b」の想像図(Credit: NASA/JPL-Caltech/R. Hurt)

【▲ 太陽系外惑星「TOI-2180 b」の想像図(Credit: NASA/JPL-Caltech/R. Hurt)】

カリフォルニア工科大学リバーサイド校のPaul Dalbaさんを筆頭とする研究グループは、「りゅう座」の方向およそ379光年先に太陽系外惑星「TOI-2180 b」が見つかったとする研究成果を発表しました。今回のTOI-2180 bの発見にはプロの天文学者だけでなく、アメリカ航空宇宙局(NASA)の系外惑星探査衛星「TESS(テス)」の観測データを分析している市民科学者が大きく貢献しています。

■TESSが検出した1回きりのトランジットをもとに発見

研究グループによると、TOI-2180 bは質量が木星の約2.8倍、直径は木星とほぼ同じで、太陽よりも少しだけ大きな恒星「TOI-2180」(太陽と比べて質量は約1.1倍、半径は約1.6倍)を約261日周期で公転していると推定されています。公転軌道の軌道長半径は約0.83天文単位(地球から太陽までの距離の約83パーセント、軌道の離心率は約0.37)で、表面の平均温度は摂氏約170度とみられています。

TOI-2180 bの平均密度は木星よりも高く、コンピューターモデルを用いた分析をもとに、重元素(水素やヘリウムよりも重い元素)の合計質量は地球105個分(木星質量の約3分の1)と算出されています。「これはとても多く、我々が木星の内部にあると推定する量を上回ります」(Dalbaさん)

TOI-2180 bの存在に最初に気がついたのは、2010年から市民科学者として活動している元米海軍士官のTom Jacobsさんでした。Jacobsさんは数名の市民科学者と2名のベテラン天文学者からなるグループ「Visual Survey Group」に参加しており、市民科学者のAllan Schmittさんが開発した「LcTools」と呼ばれるツールを使ってTESSの観測データを自らの目でチェックしています。

TESSは太陽系外惑星の検出を主な目的として2018年4月に打ち上げられた宇宙望遠鏡です。大半の系外惑星は直接観測することはできませんが、TESSは惑星が恒星の手前を横切る「トランジット」という現象を起こした時に恒星の明るさがごくわずかに暗くなる様子を捉える「トランジット法」を利用して、間接的に系外惑星の存在を検出してきました。

【▲ 系外惑星のトランジットによって恒星の明るさが変化する様子を示した動画(Credit: ESO/L. Calçada)】

2020年2月1日、TESSの観測データをチェックしていたJacobsさんは、2019年12月にTOI-2180の明るさが0.5パーセント未満だけ暗くなり、約24時間後に元の明るさに戻る様子が捉えられていたことに気が付きました。Jacobsさんが気付いた明るさの変化も系外惑星のトランジットによって生じた可能性があったため、Visual Survey GroupはすぐにDalbaさんとニューメキシコ大学助教授のDiana Dragomirさんへ検出された減光を伝えました。

ただ、TESSはTOI-2180の明るさの変化を1回だけしか観測していませんでした。TESSは全天で26個設定されている「セクター」と呼ばれる領域(24度×96度)を対象に、各セクターでそれぞれ約1か月間集中して観測を行ってきました。そのため、系外惑星の公転周期が各セクターの観測期間より短ければ複数のトランジットを検出できる可能性があるものの、公転周期が観測期間よりも長い場合は1回のトランジットしか検出できない(タイミング次第では1回も検出できない)ことになります。

「経験則に従えば、惑星を見つけたと信じる前にトランジットを3回検出する必要があります」とDalbaさんが語るように、誤検出の可能性を排除するには複数回のトランジットを検出することが望まれます。

そこでDalbaさんたちは、「視線速度法(ドップラーシフト法)」と呼ばれる別の方法でTOI-2180 bの存在を確認しました。カリフォルニア州のリック天文台やハワイ州のW.M.ケック天文台から約500日以上に渡って合計27時間の観測を行った研究グループは、惑星の公転にともなって円を描くようにわずかに揺さぶられるTOI-2180の動きを通して、TOI-2180 bの質量や公転軌道を推定することに成功しています。

【▲ 揺れ動く主星のスペクトル(波長ごとの電磁波の強さ)が変化する様子を示した動画(Credit: ESO/L. Calçada)】

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■太陽系の巨大ガス惑星と太陽系外のホットジュピター、その中間にあたる存在

トランジット法や視線速度法では「直径や質量の値が大きくて公転周期が短い系外惑星」ほど見つかりやすい傾向があります。系外惑星が大きければ大きいほど主星を隠す範囲が広くなるのでトランジットを検出しやすいですし、重ければ重いほど揺さぶられる主星の動きを観測しやすくなります。

そのうえ、公転周期が短ければトランジットをひんぱんに検出できますし、揺さぶられる主星の動きも短い周期で繰り返されますから、比較的短期間の観測で系外惑星の存在を確認したり、その性質を調べたりすることが可能です。木星サイズの系外惑星のなかには公転周期が短く、表面が摂氏1000度以上にまで加熱されていると推定される「ホットジュピター」が幾つも見つかっていますが、その背景にはこうした事情があるわけです。

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いっぽう、推定されるTOI-2180 bの公転周期は地球の9か月弱と比較的長く、主星であるTOI-2180から離れた軌道を公転しています。表面の平均温度は地球よりも高いと推定されるものの、ホットジュピターに比べればずっと低温です。DalbaさんはTOI-2180 bについて、太陽系の木星や土星とホットジュピターの間に位置する素晴らしい存在だと語っており、新型宇宙望遠鏡「ジェイムズ・ウェッブ」による大気の観測や、TOI-2180 bを公転している可能性がある衛星や環の捜索に期待を寄せています。

■TESSによるトランジットの再検出に期待

観測を行う系外惑星探査衛星「TESS」を描いた想像図(Credit: NASA's Goddard Space Flight Center)

【▲ 観測を行う系外惑星探査衛星「TESS」を描いた想像図(Credit: NASA's Goddard Space Flight Center)】

TOI-2180 bの存在や性質は視線速度法を利用して確認されましたが、研究グループはTESSによって一度は検出されたトランジットを再び捉えたいと考えています。

2020年8月にはDalbaさんによってTOI-2180 bのトランジット検出を目指した観測キャンペーンが企画され、プロの天文学者と市民科学者が3大陸14か所から観測を実施。Dalbaさん自身も望遠鏡を携えてカリフォルニア州のジョシュア・ツリー国立公園で5泊しながら観測を行ったものの、この時はトランジット検出には至りませんでした。

研究グループによると、TOI-2180 bのトランジットは2022年2月に再び観測されるチャンスがあるようです。幸いなことに、最初にトランジットを検出したTESSが2022年1月28日頃から同じセクターを再観測することになっているといい、TOI-2180 bによるトランジットがTESSによって再び捉えられるかもしれません。

 

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Image Credit: NASA/JPL-Caltech/R. Hurt
Source: NASA / カリフォルニア大学リバーサイド校 / ニューメキシコ大学
文/松村武宏