50年前から理論的に存在が予想されていた新しいタイプの連星「プレELM白色矮星」(左)の想像図。右側には降着円盤をともなう白色矮星が描かれている。(Credit:M.Weiss/Center for Astrophysics | Harvard & Smithsonian)

【▲50年前から理論的に存在が予想されていた新しいタイプの連星「プレELM白色矮星」(左)の想像図。右側には降着円盤をともなう白色矮星が描かれている。(Credit:M.Weiss/Center for Astrophysics | Harvard & Smithsonian)】

ハーバード・スミソニアン天体物理学センター(Harvard-Smithsonian Center for Astrophysics)の研究者たちは、50年前から理論的に存在が予想されていた新しいタイプの連星の観測に成功しました。

太陽などの中小質量の恒星は、最終的に、97%の確率で白色矮星になります。白色矮星とは、燃料を燃やし尽くした後、収縮して暗くなった小さな高密度の天体のことです。

しかし、これらの星の一部は、まれに質量が極端に小さい(extremely low massELM)白色矮星になることがあります。質量が太陽の3分の1未満であるこれらの星は、計算が正しければ、その年齢は138億年よりも古くなります。つまり、宇宙自体の年齢よりも古くなるため、物理的にありえません。

天文学者たちは、今の宇宙でELM白色矮星が形成される唯一の方法は、連星を組む別の星の助けを借りることだと長年にわたって考えてきました。近接して公転する星に質量を奪われるとすれば、宇宙の年齢よりも短い期間でELM白色矮星に進化する可能性があるというのです。

天文学者は、太陽のような通常の質量を持つ恒星と白色矮星からなる連星において、恒星が白色矮星に降着円盤を形成する様子を観測してきました。このような連星系は激変星とも呼ばれます。また、ELM白色矮星が通常の白色矮星と一緒にいるところも観測されています。しかし、激変星が質量の大半を失って収縮し、ほぼELM白色矮星へと進化する過渡期の姿は観測されていませんでした。

つまり、連星の進化にもミッシングリンク(missing link:失われた環)が存在するのです。

生物進化に例えれば、ジャングルである生物を見つけ、その生物を観察し詳細を記述します。そしてまた別の生物を探します。さまざまな種類の生物を見て、それらがどのようにつながっているのかを理解する必要があります。その結果が生物進化の解明へとつながっていきます。

天文学者たちもELM白色矮星になる前の天体(プレELM白色矮星、「進化した激変星」とも呼ばれます)を求めて宇宙というジャングルに分け入りました。

ESAが打ち上げた宇宙望遠鏡「ガイア」とカリフォルニア工科大学の掃天観測施設「Zwicky Transient FacilityZTF」の新しいデータを用いて、ポスドク研究員のKareem El-Badry氏は10億個の星を50個の候補に絞り込み、その後21個の星を詳細に観測しました。

この選択戦略は功を奏しました。「候補の100%が、わたしたちが探していたプレELM白色矮星だったのです」とEl-Badry氏は語っています。「これらの星はELM白色矮星よりも膨張していました。また、連星を組む白色矮星の引力で球形が歪み、卵型になっていました」

21個の星のうち13個は、まだ白色矮星に質量を奪われている(物質移動が進行中である)形跡があり、8個の星は、もはや質量を奪われていない(物質移動が停止している)ように見えました。

「わたしたちは、激変星とELM白色矮星という2つの天体の進化的なつながりと、その数がそれなりに多いことを発見しました」

El-Badry氏は、今後もプレELM白色矮星の研究を続ける予定で、同氏がこれまでに発見した29個の候補星についても追跡調査を行う可能性があるとのことです。

人類進化のギャップを埋める現代の人類学者のように、シンプルな科学から生まれる星の豊かな多様性に、彼は驚いているということです。

 

Image Credit: M.Weiss/Center for Astrophysics | Harvard & Smithsonian
Source: Harvard-Smithsonian Center for Astrophysics / 論文
文/吉田哲郎