モスクワ大学シュテルンベルク天文研究所のKirill A. Grishinさんらを筆頭とする国際研究グループは、「超淡銀河」(UDG:Ultra-diffuse Galaxy、超拡散状銀河)と呼ばれるタイプの銀河がどのようにして形成されるのか、その起源と進化に迫った研究成果を発表しました。

研究グループによると、超淡銀河の一部は数百~数千以上の銀河が集まる銀河団に存在するガスの“向かい風”を受けた結果形成された可能性があるようです。

■銀河団ガスと衝突した結果、薄く広がった超淡銀河に進化した可能性

【▲超淡銀河の一例「NGC 1052-DF2」(※今回の研究では分析の対象外)(Credit: NASA, ESA, STScI, Zili Shen (Yale), Pieter van Dokkum (Yale), Shany Danieli (IAS), Processing: Alyssa Pagan (STScI))】

国立天文台によると、超淡銀河は非常に薄く広がった銀河で、星の数は天の川銀河の100分の1以下とされています。その大きさや形態は多様で、小さく暗い楕円銀河である矮小楕円銀河に似た丸くなめらかな形を持つものもあれば、他の銀河との相互作用によって形がゆがんでいるものもあるといいます。

一般にはあまり聞き馴染みがない種類の銀河ですが、「かみのけ座」の方向約3億2000万光年先にある「かみのけ座銀河団」では約1000個の超淡銀河が見つかっていて、銀河団を構成する銀河のうち約8割を占めているとみられています。このように数の上ではありふれた存在にもかかわらず、超淡銀河の起源や進化についてはまだよくわかっていないといいます。

国立天文台によると、宇宙初期に誕生してから他の銀河と合体して成長する機会がなかったり、初期に誕生した星の超新星爆発による銀河の膨張・銀河の移動にともなう銀河団ガス(銀河団に存在する高温ガス)との衝突・銀河どうしの相互作用などによって星形成活動が阻害されたりした可能性などが考えられるといいます。

そこで研究グループは超淡銀河そのものではなく、今はまだ明るくても将来は超淡銀河に進化するかもしれない銀河に注目。平均年齢15億年以下という比較的若い星で構成されているものの現在は星形成活動がみられない薄く広がった銀河を、「かみのけ座銀河団」から9個、「Abell(エイベル)2147銀河団」(ヘルクレス座の方向約5億1000万光年先)から2個選び出しました。


これら11個の銀河について国立天文台ハワイ観測所の「すばる望遠鏡」による過去の観測データを調べたところ、銀河団ガスとの衝突によって銀河からはぎ取られたガスや星で形成されたとみられる「尾」のような構造が、どの銀河にも付随していることが判明したといいます。

【▲渦巻銀河から超淡銀河への進化を示した概念図。(a)~(d)は進化の各段階に対応するとみられる実際に観測された銀河の姿(Credit: Kirill Grishin, Legacy Surveys / D. Lang (Perimeter Institute), NAOJ, CFHT, ESO)】

研究グループは、アリゾナ州のMMT天文台にある「マルチミラー望遠鏡(MMT)」による新たな観測データから推定された星形成の歴史とあわせた上で、渦巻銀河が超淡銀河へと進化する以下のようなシナリオを提唱しています(アルファベットは上掲の画像における銀河の拡大画像に対応しています)。

銀河(a)が銀河団の中心領域に向かって移動すると、銀河団ガスと衝突することで爆発的な星形成が誘発されるとともに、銀河団ガスの圧力によって銀河からガスがはぎ取られます(b)。ガスは星の材料であるため、ガスのはぎ取りや激しい星形成活動によって銀河のガスが消費されることで、やがて星形成が停止します(c)。今回分析された11個の銀河は、こうして形成されたとみられています。

そして新たな星が誕生しないまま数十億年が経つと、恒星が次々に寿命を迎えていくことで銀河は次第に暗くなっていきます。星の数が減ったり他の銀河と相互作用したりすることで銀河は薄く広がっていき、最終的には超淡銀河や矮小楕円銀河に進化する(d、銀河のもとの質量やガスの量による)と研究グループは考えています。

つまり、超淡銀河の起源と進化は「銀河団ガスとの衝突」(研究グループは銀河団ガスの「向かい風」と表現)で説明できるというわけです。研究グループは、かみのけ座銀河団に存在する超淡銀河のうち約半分は、銀河団ガスとの衝突による星形成の誘発とガスのはぎ取りを経て形成されたと推定しています。

 

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Image Credit: Kirill Grishin, Legacy Surveys / D. Lang (Perimeter Institute), NAOJ, CFHT, ESO
Source: 国立天文台
文/松村武宏

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