天の川で10000個の新しい変光星を発見 市民天文学の活躍と期待
【▲ボランティアの市民天文学者が、天の川で約1万個の新しい変光星を発見(Credit: Shutterstock)】

科学はプロの(職業的な)科学者だけで研究が行われているわけではありません。とくに天文学はアマチュア科学者の研究活動が活発な科学分野として知られています。彗星や小惑星の発見、変光星の観測などはアマチュア研究者に支えられている部分が大きいと言われています。

ボランティアの市民天文学者が、天の川で約1万個の新しい変光星を発見(Credit: Shutterstock)
【▲ ボランティアの市民天文学者が、天の川で約1万個の新しい変光星を発見(Credit: Shutterstock)】

一般的にこのような研究活動は「シチズンサイエンス」citizen science:市民科学)と呼ばれています。天文学分野のシチズンサイエンスに携わっている人たちは「アマチュア天文学者」「市民天文学者」と呼ばれることが多いようです。

オハイオ州立大学によると、世界中の望遠鏡の観測データを解析しているボランティアの市民天文学者が今年(2021年)、天の川で約1万個の新しい変光星を発見(特定)したことが、最近の論文で明らかになりました。

ボランティアは、1月からASAS-SNAll-Sky Automated Survey for Supernovae)と呼ばれる超新星の全天自動捜索システムのデータを調査しています。この捜索システムは、オハイオ州立大学の研究者によって運営されています。

論文によると、3100人以上のボランティアが、天の川の10万本以上の「光度曲線」(天文学者が天体を識別するための重要なデータ)に対して、約839千件の分類を行いました。変光星とは、時間とともに明るさが変化する星のことで、わたしたちが見ている星の光は一定とは限りません。

市民天文学者たちは、1つの星がもう1つの星の前を通過することによって変光する「食変光星」(食連星)、星自身が膨張・収縮することで変光する「脈動変光星」、星の自転に伴って変光する「回転変光星」に大別することにしました。

関連記事:太陽系外惑星を探す新たな手法は変光星の一種「激変星」がターゲット

データが星以外の何かである場合は「ジャンク」に分類しました。例えば、地球の低軌道にある人工衛星は、望遠鏡に映る星の光を妨害してしまうので、人工衛星からのデータはジャンクに分類されます。光度曲線が他のクラスの変光星に当てはまらない場合、データを不明とマークしました。

市民天文学者たちが分類した星の中には、以前に同定されたものもあり、オハイオ州立大学の研究者たちは、ボランティアがどの程度正確であるかを確認することができたということです。

この論文の筆頭著者であり、ASAS-SNのアナリストであるCollin Christy氏は「データの中から食変光星や脈動変光星を見つけるのがとても上手でした」と述べています。

また、データのユーザーはジャンクデータを簡単に見分けることができたとのことです。

このプロジェクトは、ASAS-SNがこれまで行ってきた、ブラックホールやその他の宇宙現象を探すための活動に基づいています。ASAS-SNの望遠鏡は最近アップグレードされ、新しい変光星や超新星などの天体を探すために、より深く宇宙を見ることができるようになりました。これまでのASAS-SNのデータ解析は、主にコンピュータによる機械学習アルゴリズムを用いて行われてきました。

「私たちの主な目標は、データを公開し、科学をより幅広い人々のコミュニティと共有することです。もちろん、データから研究成果を引き出したいと考えていました」と、オハイオ州立大学の博士課程の学生であり研究員でもある、論文の共著者のTharindu Jayasinghe氏は語っています。「一般の人々が科学に貢献し、科学者と一般の人々がこのプラットフォームで交流しています。ユーザーが私たちに質問し、私たちがそれに答えることで、信頼関係を築くことができるのです。つまり、双方にメリットがあるのです」

市民天文学者たちの活動は、機械学習アルゴリズムの改良にも役立っています。「人間の目は、これまでの機械よりもはるかに優れた方法で異常を発見し、それを研究チームに報告することで、本当に偉大な発見をすることができます。チャンスを与えれば、人間はとても素晴らしいことができるのです」

日本でも、国立天文台よる市民天文学プロジェクトGALAXY CRUISE(ギャラクシークルーズ)がよく知られています。

 

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Image Credit: Getty Images
Source: Ohio State University / 論文、NHK

文/吉田哲郎