【▲ 火星探査機「バイキング」の画像をもとに作成された火星の全体像(Credit: NASA/JPL-Caltech/USGS)】

カーティン大学のAnthony Lagainさんを筆頭とする研究グループは、地球に飛来した火星隕石(火星由来の隕石)の一部について、その起源となる火星のクレーターを絞り込んだとする研究成果を発表しました。

研究グループによれば、地球には過去2000万年間に160個以上の火星隕石が落下しているといいます。これらの隕石は火星で起きた天体衝突の際に宇宙空間へ放出された岩石の一部だと考えられています。言ってみれば、火星隕石は自然がもたらした火星の岩石サンプルというわけです。これまでに火星隕石に含まれている鉱物を分析することで火星の地質学的な歴史を紐解いたり、火星で生命が誕生した可能性を探るための研究が行われてきました。

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しかし研究グループによると、これら火星隕石の正確な起源はわかっていなかったといいます。火星隕石に含まれる鉱物を分析すると、その鉱物が何億年前に形成されたのか、火星では過去にどのような地質活動があったのかといった情報を得ることができますが、その隕石が火星のどこから飛来したのかがわからないうちは、隕石から判明した火星内部の歴史と火星表面の探査からわかる歴史を結びつけて理解することはできません。

そこでLagainさんたちは、火星表面に存在するクレーターのデータベースを作成。機械学習アルゴリズムを利用して二次クレーター(天体衝突時の噴出物が落下することで二次的に形成されたクレーター)を分析することで、火星隕石の起源となったクレーターの特定を試みました。対象となるクレーターの数はおよそ9000万個に上るといいます。

分析の結果、約110万年前の天体衝突によって火星表面から放出されたとみられる一部の火星隕石(※)について、起源である可能性が最も高いのは「トゥーティング」(Tooting、直径約28km)および「09-000015」(直径約20km)という2つのクレーターであることが明らかになりました。トゥーティング・クレーターは火星最大の火山であるオリンポス山の西に、09-000015クレーターはアスクレウス山(タルシス三山のうち一番北にある火山)の北東にそれぞれ位置します。

※…火星隕石のなかでも数が多い「シャーゴッタイト」に分類される隕石のうち不適合元素が欠乏している「depleted shergottite(枯渇したシャーゴッタイト)」

研究グループによると、今回の成果は火星や地球の形成と進化についての理解につながるだけでなく、地球上の産業にも恩恵をもたらす可能性があるようです。Lagainさんは、火星のクレーターをマッピングした今回の研究は最初の一歩だと言及。今回用いられたアルゴリズムは火星以外の天体でデジタルマッピングを行うために再調整することが可能なだけでなく、農業、環境、自然災害に対する地球上での取り組みにも適用できるとコメントしており、惑星科学だけでなく人口増加と気候変動に直面する人類そのものの助けとなるかもしれません。

 

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Image Credit: NASA/JPL-Caltech/USGS
Source: カーティン大学
文/松村武宏

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