見えざる強風を巻き起こす星形成活動。ハッブルが撮影した渦巻銀河「NGC 4666」
渦巻銀河「NGC 4666」(Credit: ESA/Hubble & NASA, O. Graur; Acknowledgement: L. Shatz)
【▲ 渦巻銀河「NGC 4666」(Credit: ESA/Hubble & NASA, O. Graur; Acknowledgement: L. Shatz)】

こちらは「おとめ座」の方向およそ8000万光年先にある渦巻銀河「NGC 4666」です。地球からは真横に近い角度で見えているため、星々が集まった中心部分の明るい銀河バルジは少し隠れ気味に見えています。画像には渦巻銀河の特徴である渦巻腕に沿うように分布する塵が豊富なダストレーン(ダークレーン)が、まるで嵐をもたらす黒雲のように広がる様子が写し出されています。

欧州宇宙機関(ESA)によると、NGC 4666の中心部分からは周囲の宇宙空間へと高温のガスが激しく流出しているといいます。この数万光年に及ぶガスの流れはスーパーウィンド(superwind)と呼ばれていて、スターバースト(激しい星形成活動)によって誕生した大質量星の恒星風と、これらの星の超新星爆発によって引き起こされていると考えられています。可視光線と赤外線の波長で撮影されたこの画像ではスーパーウインドを確認することはできませんが、X線や電波を使うことでその存在を確かめることができるといいます。

NGC 4666では過去10年間に2回の超新星が観測されていて、このうち2019年に検出された「SN 2019yvr」質量が太陽の19倍もある大質量星の爆発だったとみられています。大質量星を次々に生み出しているNGC 4666のスターバーストは、近くにある「NGC 4668」など別の銀河との相互作用が引き金になったのではないかと考えられています。

冒頭の画像は「ハッブル」宇宙望遠鏡の「広視野カメラ3(WFC3)」による観測データから作成されたもので、ESAからハッブル宇宙望遠鏡の今週の一枚「Invisible Galactic Gale」(銀河の見えざる強風)として2021年10月11日付で公開されています。

【▲ 可視光で撮影されたNGC 4666(中央)とその周辺の様子。左下に見えている銀河がNGC 4668(Credit: ESO/J. Dietrich)】

 

関連:手をつなぎ踊るような2つの天体。“へび座”の相互作用銀河「Arp 91」

Image Credit: ESA/Hubble & NASA, O. Graur; Acknowledgement: L. Shatz
Source: ESA/Hubble
文/松村武宏